82話 乖離
「じゃあどうしよか」
メイがこちらに向き直って質問してくる。
「どうしよかって言われても何とも言えないけど。本来これに出会ったらどう対処するのが正解なんだ?」
「正解なんてない」
ハルが答える。
「道端で『アウトブレイク』に出会う機会なんてないもの。さっきも言った通り聖域でしか発生しないし」
「前例0かよ」
何か対策はないのか。
「『アウトブレイク』っていうのは聖域で発生する以外でどんな特徴があるんだ?」
前回のやつがそれなら、とても脅威である。それを俺は身をもって知っている。
「生まれる魔物は一種類のみで、それもある一か所からだけでしか湧かない。その魔物が湧く源の部分は『核』と呼ばれている。そこをたたいて『核』自体を働かなくなるぐらい散り散りにすれば『アウトブレイク』は収まるらしい。まあほっといても勝手に消えるらしいけど。あと、魔物の種類によって軽くランク分けされてるわね。まあ、詳しい事はあんまりわかってないけど」
だいたいのことと一致している。恐らくあれは『アウトブレイク』だったのだろう。
それを知ったところで何になるのかと言われればそれまでだが。
「このままここで待ち続けるのがいいのか?」
これが終わるのにいつまでかかるのかはわからないが、待てば終わるのならのんびり待つしかないように思う。
「そうね、核の位置が正確に把握できるのならたたきにいってもいいけど。『マピミク』で見つけられる?」
ハルがメイに尋ねる。
「周りの魔物が多すぎるせいで魔素の流れがごちゃごちゃしててわかりずらいわ。正確な位置までは把握できないわね」
「じゃあ待った方が得策か」
俺は少し地面に寝転ぶ。
そこでふと気になった。
「なあ、ずっと外にいるやつを魔物呼ばわりしてるけど、種類とかは特定できないのか? あとその魔物のランクとか」
「じゃあちょっと静かにして」
ハルはそう言いそっと目を閉じる。
俺達は黙ってハルが反応するのを待つ。
「……トロールな気がする」
少し時間が経ったあと、ハルが静寂を破った。
「あくまで気がする程度だけど」
「何をしてたんだ?」
「いろいろ感じてたのよ。魔物とかによって足音、歩くスピードとか特徴があるし、あと微かに聞こえる鳴き声とか色々頑張って感じ取ろうとしたんだけど」
ハルがメイの方を見る。
「この結界が外のあまりにも強固すぎて外の情報があんまり入ってこない」
「ほめてくれてありがと」
メイはまんざらでもない様子だったが、少し微笑んだ顔とは違いその目は笑っていなかった。
「トロールはランクでいうと『B』かしら。あ、ランクは下から『C』『B』『A』『S』の四段階ね」
メイが情報を補足する。
下から二番目。三人なら何とかなりそうな気がするのは自分たちの力を過信しすぎているだろうか。
「まあトロールっていうところだけ見るとね」
意味ありげに付け加えるハル。
俺には意味が解らなかった。
「どういうこと?」
「気持ち悪いのよ、この魔物は」
「どんな魔物だろうと大概は気持ち悪いものだろ」
「そういう意味じゃない。図体と中身が乖離してる」
頭の中でハルの言葉を反芻する。しかし、いまいちピンとこない。
メイは俺があまりわかっていない事に気付いたのか、細かく教えてくれた。
「魔物にはそれぞれ種類によって異なる魔力を潜在的に持ってるの。異なるって言っても、そんな大きな違いじゃなくて、DNAみたいな感じなんだけど。で、今回の外の魔物はトロールって教えてくれたけど、私にはわからなかった。外に何かしらの魔物がいる時点で特定しようとその魔力を調べたの。そしたら」
その時、地面が少し揺れる。
そんなに大きな揺れではなく、少しぐらつく程度だったためなんともないが。
「おっと、二人とも大丈夫か?」
「ええ」
「何の揺れかしら」
少し不思議そうにメイは周りに張っている結界を見た。
「それより、魔力を調べた結果を知りたい」
「ああ、そうね。調べた結果、ね」
メイは外の様子を探るように少し違うところを見る。
そして一呼吸おいて、メイは言った。
「人間だったの」
その言葉がよく解らなかった。
耳には届いた。意味も分かった。しかし、解らなかった。
ハルも外の方をじっと見たまま喋らない。
「魔物の中身が人間? なん」
「ちょっと静かにして」
ハルが俺の言葉を制する。
嫌な緊張感が走る。
空気が凍ったような。
俺も周りの様子が変わった事を感じ取っていた。
その瞬間、地が大きく揺れた。
足ごと宙に持っていかれるような。
バランスを崩しかけるが何とか耐える。
「まさか」
メイが少しばかり目を見開く。それは想定外というように。
その時、周りを覆っていた結界がガラスのように砕け散った。
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