80話 謎多き状況
俺は追跡を諦め、ハルとメイの方へと向かった。
「·····どうだった?」
「······」
俺は黙って首を横に振った。
「あ、周りにいた奴らは?」
そういえばもう見ていない。
先程追いかけた時も人の気配すらなかった。
「いつも間にか居なくなってたわ。多分あの人たちと同時に逃げたんでしょうね」
メイは疲れ気味にそう言う。
「そもそもなんでここで待ち伏せたんだろうな」
俺は端からの疑問を口に出す。
ここに出てくることは俺たちですらわかっていなかった。
なのに、あいつらは俺たちを囲うように待ち伏せをしていた。
「ハル、あいつらってで城から出てきた奴らか?」
俺は尋ねる。
「ええ、私もそう思って挑発したの」
あの時の既視感はそれか。
なら、思いつく理由は。
「口封じ、かな」
「え、何かやったの」
事情を知らないメイが驚いた顔でそう言う。
「オトイックでの騒動を覚えてるだろ? 城が崩壊した時、セルウェラを追ってあいつらが城の中から出てきたんだよ。その時にひと悶着あって」
「私が払い退けたけど、しつこいわね。態々ここまで来るとはね」
ハルがため息交じりに言う。
「そうだったの、あんまり巻き込まれないでね」
「あれは事故だ。巻き込まれたくて巻き込まれたわけじゃない」
「まあそうなんだけどね。『バーリャ』」
メイが唱え、俺たちの周りを結界の薄い膜が覆う。
「少し休憩しましょ」
メイの提案に俺たちは賛同した。
何がともあれ、俺たちは今後の方針を考えなければならない。
三人で草むらの上に腰を下ろした。
「まず、ここかどこなのかだが……」
俺は二人を見る。
二人とも知らないという反応だ。
「ここかどこなのかわからない事にはどうしようもないな。何か意見はないか?」
俺は意見を募る。
「何か情報があればいいんだけどね、生憎周りにあるのは木だけ」
「一番可能性が高いのは神森だろうけど、狭いわけじゃないから何とも言えない」
完全に八方塞がりだった。
周りの木々から鳥が飛び立つ様子が目の端を捉える。
もう空もオレンジ色を帯びてきていた。
「とりあえず今日はここで野宿にするか。移動は明るくなってからにしよう」
「そうね。とりあえずもっとちゃんとした結界を張るから、一回解除するわね。『リリスン』」
周りを覆っていた膜が消える。
その時、周りの空気が先ほどと違っていることに気付いた。
漠然とした不安感に襲われる。
その正体がわからない事が、よりそれを煽る。
「『フレンマ・バーリャ』」
いつもの魔術をメイが唱えるのを聞いて我に返る。
俺は気持ちを切り替えようと頭を思いっきり振った。
「ッ!? どうしたの急に」
真横にいたハルが少しびっくりする。
「あ、ごめん。別に何でもない」
「そう? ならいいんだけど」
ハルはあまりに気にすることなく、メイが作った炎の中へと進んでいく。
俺は一瞬後ろを振り返り、そしてハルの後を追った。
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