79話 不意打ち
それをハルは見逃さない。
ハルが持つダガーが刀を捉え、男の手から引きはがした。
そして、武器を失った男の首筋にダガーを静かに構える。
「いい加減負けを認めたほうがいいんじゃない? 女々しいよ」
「……俺の負けだ。殺すなら早くしろ」
静かに吐き捨てるその言葉に、この世界への執着は感じられなかった。
「言われなくてもそうす……」
「ッ!?」
ふいに、目の前の男のものではない殺気が背筋を這う。
「下がって!」
ハルに腕を掴まれ引っ張られる。
その瞬間、先ほどまで立っていた場所から凄まじい音と粉塵が巻き上がった。
よく見ると、下から巨大な岩が突き上げてきていた。
「外しちゃったねぇ」
嫌に耳に残るような口調のそれが上から聞こえる。
その時、上から何かがあの岩の上に落ちてきた。
それは静かに着地をして先ほどの男を見つめている。
「大丈夫ぅ?」
「ああ」
落ちてきた人間は先ほどの男と似ていた。
獣、今回は狐のような黄金色に輝く耳としっぽ。
獣人。
あの男がオオカミよりなのに対してこっちは狐。
「襲っちゃってごめんねぇ。悪気はないんだよ」
その狐がこっちを見てにこりと笑う。
「二人とも不意打ちで襲ってきたのに?」
「そうそう、しょうがないんだよぉ。『ログザアビ』」
手を下から突き上げるような動作を見せながら狐は最後に何かを呟く。
地面が一瞬揺れる、だが、それ以外の変化は見られない。
今のは何だ?
「……なるほどぉ」
ニコニコ顔が若干険しくなる。
しかし、すぐに元に戻る。
「帰りましょうかねぇ。ゲラリア」
その瞬間、あの男が懐から何かを取り出し地面に叩きつける。
パリンッと何かが割れるような音。
刹那、暴風が俺達を襲い、そして広がっていく。
それは周りの木々を燃やし燃え上がる炎さえも一瞬で吹き消した。
足で踏ん張り飛ばされないようにして耐える。
その瞬間、あの二人は走り出した。
「チッ。メイ! 捕まえて!」
俺は咄嗟に走り出しながら、メイに助けを求める。
メイはその風に不意を突かれてバランスを崩していたが、すぐに立て直した。
メイの目が二人を捉える。
「わかったわ。『ディ・ロピ二アン』!」
メイの杖から縄が伸び、それが二人に追いつく。
しかし、
「フッ!」
いつの間に刀を拾っていたのか、それで縄を払う。
するとその縄は淡い光を漏らしながら消えた。
失敗を悟り、俺は全力で追いかける。
しかし、木の影に隠れた彼らは、いつの間にか姿を消していた。
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