78話 フードの男
周りを覆った結界が消える。
燃え盛る炎から出た熱がジリジリと俺の皮膚を攻撃する。
「死ね」
フードの男が再び刀を引いて走り出す。
ハルがダガーを構えてその攻撃に備える。
が、
「「「『フレンマ』!」」」
森の奥から放たれる魔術。
それに気を取られてハルの防御が一瞬遅れる。
危ない。
俺は魔術の処理をメイに任せ、ハルの方へと駆けだした。
「『バーリャ』!」
再びメイが結界を張り、それらを弾く。
それを横目に俺はフードの男の顔面めがけて、思いっきり拳を突き出した。
男は俺の行動に気が付くが、その時にはもう手遅れだった。
俺の拳が顔面にヒットし、男は吹き飛んでいく。
そして、木に激突しその勢いは止まった。
「げっ、どいつもこいつも邪魔しかしねえなぁ」
明らかに怒気を孕んだ口調。
自分の思い通りにいかなくてイライラしているようだ。
「メイは外から魔術を飛ばしてくる奴をお願いできる?」
「……わかったわ」
あっちはメイに任せて、俺たちはこいつを……。
こいつを?
こいつをどうする?
この世界での殴打は何回かしてきたが、殺人はしたことがなかった。
急に思考が停止する。
人を殺すという選択肢が生まれた時、こんなに頭が真っ白になるものなのか。
相手は自分たちを殺そうとしてきたというのに。
平和ボケも甚だしい。
そんな思考の合間に男はゆっくりと立ち上がる。
すでにフードは取れている。
顔は毛に包まれ、獣のような耳が生えている。
あれは、俗にいう獣人か?
「ああ、知っているぞ。また、その目だ」
男が下を向いたまま発した喉の奥から苦しみながら生まれたその声が俺の脳内に反芻する。
「どいつもこいつを、俺の姿を奇異の目で見る。忌み子と罵る」
男は静かに、そして少しかすれるような声で話す。
「俺だって生まれたくて生まれたわけじゃねえってのに。生まれるならただの人間が良かったっていうのに」
男が顔を上げる。視線がこちらに向く。
悪寒。
その瞳からは強い憤怒を読み取れた。
俺は思わず後ずさる。
「だから、お前らみたいな恵まれた普通は嫌いなんだよ
……俺のために、死んでくれ」
刹那、男が消える。
ハルがダガーを構える。
どこからともなく現れた刀を弾く。しかし、その勢いが強くダガーは刀に押される。
押し負けると判断したのかハルはダガーに掛かった力を受け流すようにして避け、一歩下がる。
「逃げんじゃねえ」
しかし、男はそれを許さなかった。
受け流された刀が振り上げられる。
それはハルの腹を狙う。
まずい。
でも、体が動かない。
俺が何もできずにいたその時、背後から強い光が生まれる。
それによって刀の軌道が逸れ、それがハルに当たる事は無かった。
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