74話 短期決戦(1)
俺達が飛び出したことにそこにいた魔獣たちは怯んでいた。
その隙に俺たちはどんどん距離を詰めていく。
俺は右、ハルは左から攻めていく。
走ったその勢いで一匹目を蹴り飛ばす。
足の重い一撃が魔獣の顔面にヒットし嫌な音を立てる。
しかし、そんなことを気にしていられない。
自分が少しずつ狂ってきたなと実感せざるを得ない。
こんなに躊躇いなく生き物を殺すことができていただろうか。
そんなことを考えながら、俺は次々に魔獣の命を奪っていく。
魔獣の量が減っていることを実感できるので、森で襲われた大量のオオカミのような魔獣よりは楽だ。
しかし、殺せば殺すほど、あの巨体が否応なしに存在感を放ってくる。
とりあえず雑魚から殺すという考え方で動いていた。
それはハルも同じらしい。
ハルの方にもダガーで急所を切られた魔獣の遺骸が転がっていた。
その時、地が揺れた。
原因はすぐにわかった。
あの巨体が俺の方に走ってくる。
あの体から想像できないほどのスピードで迫ってくる。
俺はそれを横に飛んで避ける。
間一髪。
しかし、うまく着地ができずに転倒する。
生き残っていた魔獣がそんな俺に突進する。
ヤバイ。
魔獣の頭にある角が俺の体を貫こうとする。
「『ケルガン』」
それは、飛んできた白い玉に弾かれ吹き飛んでいった。
「助かったよ、メイ」
「お礼は後で」
メイは静かに返答する。
あらかた小さい魔獣は殺し切った。
血腥いにおいが当たりに充満していて咽そうになる。
巨体を持つあの魔獣はじっとしていた。
「グォォォォ!!!」
突然咆哮を轟かせ、再び突進してきた。
その目は俺を見据えている。
俺は再び横に避ける。
正面から太刀打ちできる気がしなかった。
確実に体を持っていかれる。
その時、横からハルが走ってきて、その巨体にダガーをふるった。
切り傷が付く。しかし、あまりダメージはなさそうだった。
突進してきたそれは急停止する。その近くにはメイの姿。
危ない!
そう思ったのもつかの間、魔獣はメイを一瞥すると次はハルに突進してきた。
違和感。
でも、今はそんなことを考えている余裕はない。
ハルは持ち前の瞬発力で正面から向かってきた魔獣をすんでのところで避けた。
「よっ」
「グャャャャャ!!!」
その時、魔獣が絶叫のような鳴き声を上げる。
見ると、目から血が流れていた。
あの一瞬でハルが切ったのか。
目が見えなければこっちのもんだ。
俺はそいつに向かって走り、横腹を思いっきり殴った。
体が抉れ、血が噴き出る。
「グゥゥゥゥゥゥ!!」
何かをこらえるような、そんな声を漏らしている。
そして突然静かになる。
俺は少し離れてその様子を見る。
すると、体が一瞬光った。
次の瞬間、
「傷が、ない」
ハルがつけた切り傷も、俺が殴った跡も、すべてなくなっていた。
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