72話 備蓄
俺は先ほどの光景を二人に話すか考えあぐねていた。
しかし、それでどうなるのだろう。
先程のことは伝えずにアドバイスだけもらうことにしよう。
「なあ、メイ」
「どうしたの?」
「なんか攻撃用の魔術撃ってくれない?」
「いいけど、なんで?」
「言ってなかったと思うけど、俺って魔術とか蓄えられるんだ」
「ああ、なるほど。わかったわ。どんな魔術がいい?」
「何でもいい、好きなものを出してくれ」
「それなら、『エクスパー』」
メイがいきなり撃ってくる。
「『吸収』」
突然現れた白い玉に向かって、俺は唱える。
それは手の中に吸い込まれる。
「ありがとう。あと、もう一発撃ってくれないか?」
「大丈夫?」
「それを試すためだよ」
「何してるの?」
前を進んでいたハルが俺達の様子に気付きこちらに近づいてきた。
「メイに手伝ってもらってるんだよ」
「何を?」
「まあ見とけって。メイ、いいぞ」
「わかったわ。『エクスパー』」
「『吸収』」
再び現れた白い玉はまた俺の手の中に吸い込まれた。
「……ああ」
ハルがわかったような声を出す。
「大丈夫そうだな」
俺の体に特に違和感はなかった。
つまり蓄えられる魔術は一つという制限はないらしい。
いくつ蓄えられるかはわからないが、それだけ知れただけでも十分だろう。
また、蓄えた魔術を出すときは一括なのかそれとも一つずつなのかはわからないが、どちらにせよここで撃つのは危険なのでやめておく。
外に出た時にでもするか。
あ、そういえば。
「外で誰かが待ち伏せしてるみたいだ」
「……なんでそんなことがわかるの?」
メイは怪訝そうな顔で俺を見る。
「直感だよ」
適当に誤魔化す。
あの男に関しては何も言わない事にしよう。
話がややこしくなる。
しかし、何故あいつは俺のことを知っていたんだろうか。
俺の持つ能力自体、周りに言いふらしたりしたことはなかったはずだが。
「……キ」
神海がどうとも言っていた。そこに行けばわかるのだろうか。
それとも弄ばれているのだろうか。そうならば何のために。
「…ーい、イツキさーん」
そこでハルが俺に話しかけていることに気付いた。
「どうした」
「それはこっちのセリフ。急に何か考え込んでたから。何か心配事?」
「大丈夫、気にするな」
多分大丈夫とは思われていないが、ハルは俺に言及するのをやめた。
「それより、俺がいない時二人は何をしてたんだ?」
俺は話題を変え、少し気になっていたことを尋ねてみた。
「何してたって言われても、私が空間把握魔術で二人を探してハルだけ見つけたから合流したのよ」
メイが答える。
「イツキがいないから何回か同じようにしてたけど、イツキはいないし、なんか急に魔物がわき始めるし、来たときは一本道だったのに道が入り組んでるし、大変だったのよ」
「それでとりあえず出口の方に近づこうってなって歩いてたら泣きそうに座ってたイツキがいたの」
ハルが続ける。
「泣いてないけどな」
「それを私が慰めて泣き止ませて安心させてからメイを呼んだの」
「泣いてない」
「そうだったのね。一人で寂しかったよね」
「わかっててやってるだろ」
二人が子供を見守るような温かい表情で俺を見る。
その顔をやめてくれ。
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