62話 行動開始
俺はセルウェラを抱えて走る。
先陣を切っているのはハル、その後ろをメイ、俺と続いている。
通り道と予想した『道』は反対側のため、急がなければオトイックに入ってしまう。
あの煙玉も流石に国一つを覆えるほどの量はないため、また別の案を考えなければならなくなる。
木々を避け、どんどん進んでいく。
俺はもうどの方向に進んでいるか解らなくなっているが、ハルは大丈夫なのだろうか。
同じような景色、同じような木々、ただひたすらに走るだけ。
俺は前の二人についていきながら別のことを考えていた。
前にメイの作った炎の中で寝た時には、大量の魔獣に囲まれていたが、それ以降一度も魔獣は目にしていない。
あれは聖域特有の個体なのだろうか。
しかし、前にハルがギルドもあると言っていた以上、他にも魔獣は存在していると考えていいはずだ。
そんなにごく少数か、もしくは一部の地域に異常に固まっているか。
どちらにせよ、会わないほうが好都合なので、今のままでいいのだが。
あと、ギルドも少し行ってみたい。
俺はこの世界では一文無しなので金を稼ぐ手段が欲しい。
しかし、身分証明などと言われれば完全に詰んでしまう。
異世界から来たことを告げれば、勇者と思われる可能性が高い。
あるいは頭のおかしい人か。
日本にいた時に異世界に島流しされた人たちの物語を読んだことがあるが、よくもまあ平然とギルドに入ることができたものだ。
ギルドに入ることがあっさり出来たらいいのだが。
いや、追われている身でそんなのんきなことできるわけないか。
俺達はまだ走り続ける。
「『道』のすぐそばまで来たよ」
ハルが止まり、俺たちにそう呼びかける。
「まだ馬車が通ったような跡がないからここは通ってないと思う」
「ならここで待ち伏せだな」
「どのくらいの距離にいるか調べてみるわ。『マピミク』」
メイが杖を取り出し、唱える。
何度も見た光景。
「少し遠かったわ。しばらくここで待ちましょ」
俺達は草の上に座り、少しばかり休息をとる。
「セルウェラ、『煙』を吸わないように口元を布か何かで抑えておけよ」
「手拭いで大丈夫でしょうか」
花の刺繡が施された綺麗な手拭いを取り出す。
「ああ、それでいい。綺麗な刺繡だな」
「はい、お母様が縫ってくれたんです。私の宝物の一つです」
セルウェラが静かに答える。俺は黙って聞いていた。
「イツキは何か持ってるの?」
「俺は服の袖で口をおさえる」
「……セルウェラを抱えた状態で?」
「無理だな」
「もう抱えてもらわなくても大丈夫です。自分の足で会いに行きます」
「わかった」
そうして、俺たちは馬車が来るのをじっと待っていた。
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