56話 ロリコン
俺は後ろを確認する。
もう誰も追ってきてはいないようだ。
前を走っていたメイとハルがスピードを緩め、俺もそれに続いた。
「『リリスン』」
メイは何か唱えていた。
辺りは暗くなってきている。
結局オトイックではろくに休むことができなかった。
セルウェラはというと。
「寝てるな」
静かに寝息を立てていた。
「『フレンマ・バーリャ』」
メイは少し先の草むらに火をつけている。
確かあの時は木の棒を集めたはずだが。
「木の棒を集める必要はないのか?」
「今あなたは木の棒を集められる状況なの?」
メイは腕の中のセルウェラを見ながら言う。
「だから草の生い茂っている場所を探してたのよ」
「妙に長い間走っていたのはそういうことだったのか」
「ええ、私って気遣いができるレディだから」
そう言うとブツブツと呟き始めた。
ハルは少し離れたところで空を見上げている。
「ハルってあんなに強かったんだな」
俺はハルに近づきながら話しかける。
ハルがこっちを向く。
「まあね。イツキだって強いでしょ」
「俺の場合はただの力業だけどな」
俺は苦笑いを浮かべる。
「まああの時は危なかったから助けたけど、次からは自分で何とかしてね。私、守るより守られる方が好きだから。イツキも、その子みたいな守りたいと思ったものを守れるようにしたほうがいい」
「ふぁーあ。ここどこ?」
その時、セルウェラが目を覚ます。
結局どこにも降ろせずに俺が抱えたままだった。
そしてセルウェラが俺の顔を確認すると、一気に顔が赤くなった。
「えと、あれは違いまして、いや、違わなくはないんですけど、そういうわけではなくて」
「伴侶なんでしょ」
ハルが揶揄う。
ボン、と爆発音がしそうなほど赤くなるセルウェラ。
「――」
そのまま固まってしまった。
「用意できたわよ」
メイが俺達を呼ぶ声が聞こえる。
「じゃ、私は先に行ってる。ロリコン君も頑張りたまえ」
「うん、わかっ……。ロリコンじゃねえ!」
ハルは手をひらひらとさせながら高く燃え上がった炎の方へ歩いていった。
「イツキさん、ですよね?」
セルウェラが細々とした声で俺に尋ねる。
「ああ、そうだよ」
「あの、非常に恥ずかしいので、降ろしてもらってもよろしいでしょうか……」
「わかった」
俺はゆっくりと降ろす。
「助けていただいてありがとうございます」
降ろした途端、真っ先に深く頭を下げられた。
「いやいや。怪我はない?」
「おかげさまで特には」
「それならよかった」
そして気まずい沈黙。
「あの」
「どうした?」
「伴侶になっていただくというのは……」
「セルウェラって今いくつ?」
「12です」
「小学生……」
これはロリコン認定されてもしょうがない。いや違うけど。可愛いとは思ったけどロリコンじゃないし。
「ショウガクセイって何ですか?」
「こっちの話だから気にしないで。結婚はもうできるの?」
「王族は特例で本人と王、あるいは王の承認、あ、王は今はお父様ですね、で、その二つのどちらかに当てはまっているなら何歳でもオールオッケーです」
セルウェラは指で丸を作る。
「私がお父様を説得しますので、どうでしょう?」
「と言われてもね……」
正直、問題が多すぎる。
「今すぐ決めていただかなくても大丈夫です。また考えててくれると嬉しいです。それともう一つお願いがありまして……」
「どんな?」
「私を、お父様の元に連れて行ってはくれないでしょうか」
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