55話 どこかで見た事のある組み合わせ
「なんで勝手に出歩くの!」
僕は叱責を受けていた。
「あの方の妻が死んだ今、あの方に寄り添えば次の妻になる事だって可能なはずです。あなたは私と一緒にあの方の手助けをなさい。私が妻になれば生活は安泰よ。だから勝手に出歩かないで頂戴」
「……はい」
そう考える人は他にもいるだろう。あの方の妾は多かった。
「ノレジ、その目は何? 何か言いたいことがあるなら言いなさい」
『いえ、何もありません』
「だからその変な言葉を使うのはやめなさいって言ってるでしょ! またあの婆のところに行ったのか。気味悪い意味不明な言葉を使ってくるのに。いいこと、あの方の前では絶対に使わないで頂戴」
「わかりました。ごめんなさい」
僕は額が地につくほど深く頭を下げ詫びの態度をとる。それで満足したようだった。
こういう人たちにはそれっぽい態度を示しておけば案外何とかなるものだ。
「それにしてもノレジ探しを私兵に任せてよかったわ。後で報酬でも上げるべきか」
この人たちは醜い。人間とはここまで堕ちることができるのか。
だから僕は知識を得る。
知識で、無限の可能性で。
いつかここをぬけだせたらなと思う。
「そうそう、あの方の娘も誰かに連れ去られたらしいよ」
「え、セルウェラ様が?」
「ええ、メルミタが止めるために戦ったけど負けたって」
この国でもトップクラスの衛兵が負けただと。
「気絶してたけどついさっき起きたそう。曰く、三人組で一人は男、あとの二人は女だったらしいわ。その女二人には制止魔術が効いてなかったらしいわ」
三人組、一人は男でもう二人は女。
どこかで見た事のあるような組み合わせ。
「そうだ、ノレジ。あんた知識だけは無駄に持ってるし、今日も外を出歩いてたでしょ。何か有益な情報はないの?」
「さっき言った三人組って、男の髪色は黒、女はそれぞれ銀と桃色?」
「え、なんでわかったの」
「街でその人たちを見た」
「そういうことは早く言いなさいよ」
「……僕が連れてきた」
「え? どこに」
「城に」
「何? その人たちと接触したの?」
「接触どころか、セルウェラ様が連れ去られたのは僕のせいかもしれない」
「……一から話しなさい」
僕は街で彼らに話しかけたこと、彼らと街を行動した事、城で共に爆発を目にしたことを伝えた。
「……隠れていなさい」
「え?」
「いいから。あなたはもう外には出ないほうがいい。いまに」
その時、玄関のドアからコンコンコンと、ノックの音が聞こえた。
「どこか押し入れにでも入ってなさい。早く!」
僕はクローゼットの中に入り、母上と来客者が話していることに聞き耳を立てる。
「アンタの子はどこに行った? 姫を誘拐したと思われる三人組と街中で一緒に歩いていたことや城の前にいたという目撃情報があった」
「……まだ家に帰ってきてないんです。私にはどこにいるか見当もつきません。私兵にも探させているところです」
「隠していたらどうなるかわかっているよな」
「ええ、当然。見つかり次第すぐに報告させていただきます」
「ああ、また後日もういちど尋ねに来る」
「わかりました」
母上は頭を下げる。
扉が閉まる音がする。
僕はクローゼットから出る。
「見つかればあんたも私も殺される」
母上は淡々と話しだす。
「後日尋ねに来ると言ったがあいつらは多分私が家の中に隠していると思っている。だから、逃げ出そう」
そう言うと、母上は居間にいく。
畳が敷き詰められている。
「多分仲間を連れてすぐに戻ってくるだろう。だから」
畳を持ち上げる。そこには扉があった。
「ここから逃げるよ」
扉を開ける。
その時、玄関の戸が強く叩かれる。
「行くよ」
扉を開け、扉が閉まれば畳がもう一度敷かれるように畳を扉に重ねる。
僕もその中に入る。
ドン、と強い音が家の中に響く。戸が壊されたのだろう。
扉を閉める。
綺麗に畳が元に戻り、そこへ大量の人たちが流れ込んできた。
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