20話 国際最重要会議(2)
「ええ、どうぞ」
「えっと、あなたは、その、何もされなかったの? その、勇者に」
「はい、特に何もされる事なく、無事にここまで来れました。そこがまだ彼が魔の勇者だと確定できない理由です。なぜ彼は一切攻撃をしなかったのか、そこが少し引っかかっています」
「じゃあ、勇者はどこにいるの」
「玄関に行きたいと言っていたので、案内しました」
「……は?」
その言葉の後、またしても空気が凍る。
「逃がしたと?」
「はい。あの状況で私が何かしたら、この建物、いや、国ごと吹き飛んでもおかしくなかったはずです。彼に敵意はなかったので、私は何もせずに、いや、何もできずに逃がしました」
再び始まる静寂。
誰も彼女を責めることはできない。
自らがその場にいた時、平然を装い彼と接することができるだろうか。
そう考えると何も言えなくなってしまった。
「これから、どうしましょうか」
話そうとしたその時、再び入り口のドアが勢いよく開いた。
「魔の勇者が脱走しました!! 大変です!! 魔の勇者が!!」
ミナトが入ってきて訴えている。そして、その姿を見て会議に出席していた誰もが嘆息した。
「え? どうかしましたか?」
「彼はもうここにはいない」
「は?」
「逃げられた」
「……」
ミナトは茫然とし、黙り込む。下を向き、唇を嚙んでいる。
「おい! 貴様!!」
ミナトにいきなり怒号が飛んでくる。慌ててミナトは顔を上げる。
「あいつは俺に任せろって言ったのは誰だ? お前だろ!! なのに何が脱走しただ? お前の怠慢で逃がしたんだろ!!」
ミナトは何も反論できない。だってすべて事実なのだから。
ミナトは自分の馬鹿さ加減が嫌になる。
相手はあのイジュフの森から現れ、「黒幕の英雄」のグループを1人で壊滅させたという人だ。
あの程度はぬるかったんだろうと言うのは今冷静になってみれば容易く想像出来た。
全て自分の落ち度である。
「ミナトよ、下がれ」
「ですが……」
「いいから下がれ」
「……はい」
ミナトは部屋を出ていく。あとに残るのはうるさいほど響く静寂の空気。
「あいつも勇者のくせに。勇者が聞いてあきれる」
誰かがそう呟くのだった。
そして、再び静寂が訪れようとした時、入り口の扉がノックされた。
「誰だ?」
「失礼します。騎士団副団長のフェモネです。ご報告があります」
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