表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/4

第1章 3 魂≪ソウル≫という戦い方

誤字脱字などございましたら、教えていただけるとありがたいです。

「はい、ばあちゃん。取り返したよ」


 そういって、ひったくり犯から取り返したバックを、おばあさんに差し出すレンに対し、おばあさんはとても感謝した様子で、


「ありがとう、ほんとに助かったよ」


 と感謝の言葉を何度も言っている。それに対し、何も考えることなく反射的にバックを取り返していたレンは、そんなに感謝されてもなぁ~と、少し照れ臭く感じながらも、いやな気はしないので、


「まあ、いいってことよ」


 と、少し得意げに返事を返していた。


 その横で、制圧したひったくり犯が目を覚ましたので、レンはおばあさんにバックを渡したあと、そのひったくり犯を地面に押さえつけながら、


「ばあちゃん、こいつどうする?」


 と聞いた。そうするとおばあさんは、


「どうするも何も、そいつはあんたが取り押さえたんだから、あんたの自由だよ?」


 と何を聞いているのかわからないといった表情で、頭を傾けながら不思議そうにしている。


 そこで、これは何か認識の齟齬がありそうだと感じたレンは、


「俺この町に来たばっかで、この町の仕組みに詳しくないんだよね、こういう場合どうするのが普通なの?」


 とおばあさんに質問した。そうしたらおばあさんは、「どこも大体一緒だと思うけどね……」とこれまた少し不思議そうな表情を浮かべたが、レンの質問に答えてくれた。


「そいつはあんたが取り押さえたんだから、どうするもあんたの自由だよ。めんどくさかったらそのままほっといてもいいだろうし、治安維持ギルドに持っていったら、常駐のGuardian(ガーディアン)がいるから、少しはお金になると思うよ」


 そう教えてくれたおばあさんに対して、レンが、


「あれ、警察とか呼ばなくてもいいの?」


 と聞くと、


「ケイサツ? 何だいそれは?」


 と警察の存在を知らないらしい、なのでここでは言い方が違うのかと考えたレンは、


「えっと、犯罪者を取り締まったり、そいつらを捕まえて牢屋に入れたりする人たちのことかな?」


 と、この説明でいいのか自らも不安になりながら、おばあさんに自分の知っている警察について説明する。


 そうすると、


「う~ん、ケイサツとやらが何なのかわからないけど、一番近いのはやっぱり治安維持ギルドかな。でもなんで犯罪者を捕まえておくんだい? 奴隷に落として労働力にした方がいいだろうに……」


 と不思議そうにしながらも、教えてくれた。


 おばあさんの話では、どうやら警察というものがないらしい。


 今わかっているのは治安維持ギルドに持っていくと奴隷として労働力にされるということと、持っていけばお金が手に入るということだ。


 レンはあまりよくわかっていなかったが、郷に入っては郷に従えということで、お金も必要なのでこのひったくり犯を治安維持ギルドに持っていきお金に変えようと思った。


 そこでおばあさんに道案内を頼むと、別に予定もないとのことなので、喜んで引き受けてくれた。


 なので押さえつけていた男をどうやって運ぶかと考えていると、男はレンとの実力差で逃げることをあきらめたのか、おとなしく付いて来てくれるようだ。


 なんでこんなに素直についてきてくれるのか不思議に思いながらも連れていくことにして、レンはその場を離れた。


 男がおとなしくついてきたのにはもちろん理由がある。この世界では警察組織みたいなものはなく、治安維持ギルドがその代わりをしているが、別に犯罪を取り締まっているわけではない。


 彼らが行っているのは、何をしたら奴隷として何をさせられるのかを決め、それを課すだけだ。


 そのルールはかなり厳格で、一度捕まった後に、また逃走を図ってもう一度捕まると、一気に刑が重くなる仕様なのだ。


 また治安維持ギルドには嘘を見破る装置もあり、にげられない相手なら、にげないで連れてかれたほうがひったくり犯的にも得ということもあり、このひったくり犯はおとなしくついてきている。


 今回程度の犯罪なら、二、三日肉体労働を無償でする程度で済むことも関係しているだろう。


 これがより厳しい刑が待っているときなどは死ぬ気で抵抗もしていたかもしれない。


 そんな事とはつゆ知らず、なぜひったくりするほどの小悪党が、おとなしく連れてかれているのか不思議なレンは、おばあさんに治安維持ギルドまで案内されている間、常に警戒しており、ついたころには結構疲れていた。


 そうして、治安維持ギルドでスムーズに犯人の受け渡しを終えたレンは、お金を初めて自分の手で稼いだのだが、そのままお礼にご飯をご馳走してくれるというおばあさんの言葉に甘えて、おばあさん家までついていった。


 おばあさんの軽く世間話をしながら、歩くレン。そうしてしばらくすると、段々人通りのない市外地にやってきた。


 市外地はは内側と違って、建物もそこまで高くなく、せいぜい二階建てくらいだ。そうしてしばらく歩くと、おばあさんの家に到着した。


「ここがあたしの家だよ。ささ、上がっておくれ」


 そういっておばあさんが入っていったのは、見るからに築年数のたっている古ぼけた道場だった。そこはきれいに管理されており、建物自体はしっかりとしていたが、作りも周りの建物と異なっており、結構古い建物の様だ。


「ここが婆さんの家なのか? ここって何かの道場みたいだけど……」


 そういいながら、お邪魔するレン。中に入るとすぐに奥の方から稽古の声が聞こえてきたので、おそらく道場で間違いないだろう。


「そうさね、ここは今は息子がやっている道場だね。とりあえず上がっていきなよ。……マリーさん居るかい?」


 そういって、奥の方に呼びかけるおばあさん。そうするとすぐにおしとやかな見た目の、美しい女性が表れて、


「お義母さん、お帰りなさい。あら? 後ろの方は?」


 とレンの存在に気が付いて、おばあさんに疑問を投げかけている。それに対してレンも即座に会釈をして、友好的な対応だ。


 しかしレンの観察眼はしっかりととらえていた。


「(あれは……Eだな)」


 一瞬で、女性のバストのサイズを見抜くのはレンの数少ない特技の一つであるが、かつてそれを声に出したところひどい目にあったレンは、それ以降は心の中で言うようにしている。


 レンが、そんなしょうもない特技を披露していることなど露知れず、おばあさんはマリーさんにレンのことを紹介する。


「この人はひったくりからあたしのバックを取り返してくれた人でね、お礼にご飯を落ちそうしようと思っているんだ。何か作ってやってくれないかね?」


「まあ、そうでしたの。どうぞ上がってください」


 そういって、中を進められたレンは、


「じゃあ、お邪魔します」


 といって、中に上がった。中に入るにつれて稽古の声が大きくなるので、


「ばあさん、この声って稽古の声か?」


 と、レンが聞くと、


「そうだね、たぶん今の時間だったら息子が孫に稽古をつけていると思うよ。見ていくかい?」


 と聞かれたので、気になっていたレンは、是非見たいといって、稽古場まで案内してもらった。


 稽古場につくと、何やら掛け声と同時に素振りの音が聞こえ、中に入ってみると、なんと刀を素振りしていた。


 この世界にも刀があることに少し驚いたレンだったが、そこは元日本男児。刀は無条件にかっこいいと感じるので、一気に食いついた。


「おお! ここは刀の道場なのか!?」


 そんなレンの反応に、珍しいものを見たような表情のおばあさんは、


「おや、あんた刀を知っているのかい? 今じゃかなりのマイナー武器なんだけどね」


 と、驚きながらも感心したように言った。


 そうすると、二人が稽古場に入ったことに気が付いたおばあさんの息子と孫がこちらに気が付き、稽古を中断して、息子の方が、


「ん? 母さんか。あれ、後ろにいる人は誰だい?」


 と、先ほどのマリーさんとの会話の再現のような会話が繰り広げられた。そこで軽くおばあさんが事情を説明したのちに、マリーさんのご飯が出来上がったみたいなので、みんなで一斉に食べることにした。


 マリーさんが作ってくれたお昼ご飯は、家庭的でとてもおいしく、とても満足したレン。最初はご飯に連れられてやってきたレンだったが、今は刀の道場に興味津々だ。


「ごちそうさまでした。それにしてもここは刀の道場なのか? マイナー武器って言ってたけど…正直ちょっと興味があるんだよね」


 本当だったら、ここでどうやってお金を稼いだらいいのかなどのアドバイスをもらうのが一番なのだが、せっかく出来た縁を無駄にして、自分の興味を優先するレン。それに対して嬉しそうに答えるのがここの道場主でもある、おばあさんの息子のシンだ。


 ちなみに、先ほどの食事前に、簡単な自己紹介は互いにすましており、おばあさんたちの名前は、おばあさんの名前がテレサ=トウドウ、それにつずいて息子のシン=トウドウ、お嫁さんのマリ=トウドウ、一人息子のアッシュ=トウドウ、の四人家族である。


「そういってもらえると、うれしいな。この道場も父さんが生きていたころは結構人気があったんだけど、僕の代になってからてんでダメでね。もともと習得するのが難しく、初めのうちは全く使い物にならないのが刀という武器だから、なかなか人気がなくて。でも現役Gardian(ガーディアン)だった父さんの功績のお陰と、ご先祖様のお陰で何とか存続しているって感じだから、少しでも興味を持ってくれる人は大歓迎だよ。よかったらこの後体験してみる?」


 とレンを稽古に誘ってくれた。転生前は本物の刀なんか触ることもなかったレンにとって、刀を触れるというだけでわくわくするイベントだ。なので断る理由もなく、二つ返事で稽古に参加させてくれるよう頼んだ。


 そうして、一行はシンさんの後をついていき、稽古場についた。先ほど稽古をつけてもらっていたアッシュは、今回は俺の稽古を一緒に見てくれるらしい。


「それじゃあ、今からレンに稽古をつけようと思うんだけど、レンって刀についてどれくらい知ってる?」


 開口一番レンに尋ねるシン。そうやって聞かれてレンは、


「そうだな、俺も発祥の国出身ってだけで、詳しくないんだよね。確か世界で一番切れ味のいい刃物で、その代わりもろいってことぐらいしか知らないな」


 と、答えた。


 それに対して、シンさんは、


「ん? 発祥の国出身? この刀って武器はGardian(ガーディアン)の前となる組織を作った、俺のご先祖様が、この世界に持ち込んだ武器なんだけどな。レンってどこ出身なの?」


 とレンに対して、質問した。それに対してレンは何も隠すことなく、


「ああ、Gardian(ガーディアン)を作った人が転生者だから、クロ婆たちは驚いていたのか。なるほどね……ん? ああそうだ、俺もそのシンさんのご先祖様と同じ転生者なんだよ。といってもおととい転生したばっかだから、この世界の事何も知らないんだけどね。あれ、これってあんまり言っちゃいけないんだっけ……まあいいか」


 と、会長たちに厄介ごとに巻き込まれるからあまり言いふらさないようにと注意を受けていたのにもかかわらず、すぐに教えてしまったレン。


 しかし、おばあさんを助けたことや、シンさんたちのご先祖様も転生者だったこともあり、今回はその選択が吉と出た。


「ええ!! レンって、転生者だったの?」

 

 そういって食いついてきたのは、シンさんの息子のアッシュだ。


 アッシュは年齢は13歳と少し幼いが、しっかりと修業をしており、才能もあるためすでにかなりの実力者だ。それにご先祖様とおじいさんにあこがれて、将来はGardian(ガーディアン)になって、道場を再建するのが夢な元気な少年だ。

 

 食いつくアッシュに対して、少し疑っている様子のシンさん。しかしそんなことはお構いなしなのがレンという男だ。


「ああそうだよ、おとといこの世界に転生して、今の目標はGardian(ガーディアン)になることかな。バーリアルっていうGardian(ガーディアン)にこの町まで連れてきてもらって、なんだか楽しそうだから目指しているところ。今はそれ以外には目的がないけど、今は刀を触れるってころで、結構楽しみだな」


「え!! バーリアルって、あのバーリアル=ジンクス!?」


 そう、少し興奮気味なアッシュに向かって、


「確かそんな名前だったかな……」


 と自信なく答えるレンだったが、アッシュは子供らしくあこがれの人物の名前に興奮気味だ。


 そんなこんなで、二人で盛り上がっていると、シンさんが軽く咳ばらいをし、話を戻した。


「えっと、その話はいったん置いといて、取り敢えずレンの刀に関しての認識は大体あっているかな。付け加えるとすると、(ソウル)でしっかりと強化してあげることさえできたら、かなり強力な武器になるという事かな。まあその強化する部分が簡単にはできないから人気がないんだけどね……」


 と教えてくれた。しかし、そこで魂で強化するという知らない単語が出てきたのでレンは、


「魂で強化するっていうのはどういうこと?」


 と質問する。そうすると、シンさんもアッシュも困ったような表情をしており、シンさんが、


「魂を使って、強化するっていうことなんだけど、もしかして知らないの? でもGardian(ガーディアン)目指しているんでしょ」


 というので、


「知らないな、普通知っているものなのか?」

 

 と質問に質問で返すレン。それに対して驚いた様子で、


「たまに知らない人もいるけど、普通は知っているね。こうなると転生って話もあながち嘘じゃないかもしれないな……えっと、魂っていうのは、生き物なら誰しも持っている力のことで、それを使うにはかなりの年月が必要だけど、うまく使いこなすことができると、超常的な力を発揮するものって感じかな」


 と、説明してくれた。そしてそのまま続けて、


「でも、本当に見たこともない? 使える人はあんまりいないけど、見たことある人は多いんじゃないかな。こんなのとか」


 といって、何も持っていない右手をシンさんが前に出したと思ったら、次の瞬間にはすでに刀が握られていた。それは明らかにマジックの類ではなく、何もない空間にいきなりあらわれた。


「うわぁ!」


 その不思議な現象に思わず声を上げてしまうレン。その反応に本当に驚いていることを知り、やっとここでレンの話を信じだしたシンさんだった。


「その反応は、本当に見たこともないみたいだね。これは魂の使い方の一つで、人はだれしもその魂にあった能力があるんだ。それを引き出してやると誰でもできるんだよ。まあ魂の使い方の最終形態だね」


 そういうシンさんに対して、レンは、


「なるほど、じゃあ俺も使えるようになればそんなことも出来るようになるのか……」


 と言ったので、すぐさま、


「いや、同じことができるかどうかは特性にもよるから何とも言えないな。自分に合った能力があるし、一つ能力が決まってしまったら、基本的にはもうその人の能力は決まってしまって、あとからほかの能力に変えることはできないからね。皆自分の特性に合った能力を選ぶんだよ。まあ正確に言えばその時になったらおのずとどういう能力なのかはもう知っているみたいな感覚なんだけどね」


 とレンの考え方を訂正してきた。そんなこんなで、最初は刀に興味を持っていたレンも、今ではすっかり魂に気を取られてしまっていた。


「まあ、レンも魂を知らなかったみたいだし、魂についてもう少し教えようか」


 そういって、シンさんはレンに魂の基礎を教えてくれた。


 まとめると次のようになる。まず体に纏うことでそのエネルギーを強化する、もしくはその物体の耐久力を高めることができるようだ。


 つまりは、戦いの時に、攻の魂(アタックソウル)を纏って殴るとその威力が増し、それを防の魂(ディフェンスソウル)を纏うことで防御することができるといったイメージだ。そんなバトル漫画によくある、ありがちな力が魂というものだと思ってもらっていい。


 その中でも、体だけに纏うのではなく、武器などにも纏わすことができ、それによって刀の強度を高めて、刀が折れないようにするのが、この道場での教えだそうだ。


 また魂を纏って戦うことは、魂での戦闘において基礎中の基礎だが、自分の肉体以外に纏うことはそれなりの高等技術なので、それができないと使い物にならないこの道場の流派が廃れていっている原因の一つになっているらしい。


 また、その上のさっきシンさんがやった、いきなり刀を出した技は、魂を使った技術のうちの魂の発現(ソウルアウト)と呼ばれるのもで、自らの魂に眠った力を取り出すものらしい。


 まあ、簡単に言えば誰でも覚えられる超能力みたいなものだ。それらを使って戦うのがこの世界では常識らしく、使える人と使えない人では、必ずと言っていいほど使える人が勝つのが常識だ。


 これ以上詳しくなると、時間がかかりすぎてしまうので今回はこの程度にするが、基本的に魂を使えるようになるには10年以上の修業が必要で、才能がある人でも1年から2年は必要なものがこの魂というものだ。なのでおのずと使えるものは限られており、ある程度の家庭環境がないと習得するのが難しい。


 なので使えるものは、家柄の良いものか、今回のアッシュやシンさんみたいに、戦うことを生業にしている者や、Gardian(ガーディアン)になるほどの何かの達人に限られてくる。決して一般の人が使える技術じゃないのは確かだ。


 そんな魂だが、存在自体は別に隠されていないので常識のような存在だったが、それを知らなかったレンにとってはいきなり表れたファンタジー要素で、興奮せずにはいられなかった。


「シンさん、刀も使ってみたいけど、魂ってのも俺に教えてくれない?」


 なので、レンがこのような行動に出ることは、もはや当たり前のことだった。


次回はレンの才能や、魂のことが少し浮き彫りになってくる回になる予定です。

どうぞお楽しみ下さい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ