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浄化

「さーてと、少し時間くれ」


そういうと金髪の女性はチョークで男の周りの床に何かを書き始めた。丸の図形の中にミミズみたいな文字が書かれていく。魔法陣だ。これが魔法陣だとわかるのはいいが、なんの魔法陣なのかの理解はできない。魔法に造詣が深いわけでもないから分からなくて当然だ。だが話の流れ的にいうのなら『黒の住人パレード』とやらの浄化に使うものなんだろう。



「兄様、私本で読んだことあるんだけど、黒の住人の浄化に使う魔導具には強力な浄化作用のある聖水を含ませないといけないって。でもあのチョークから感じられる聖水の力みたいなものはほんの少しだけ。あれじゃ浄化は出来ないんじゃないかな。私も実物の聖水を見たことがあるわけじゃないから詳しくは分からないけど。」



メアリは生まれながらに心眼の力を有している。だから俺が見えない領域も視覚として捉えることができる。おそらく今見ているものもそれによるものなのだろう。俺は見えないからなんのこっちゃかさっぱりだが。


しかし、聖水の量が足りないというのはどういうことだろう。受付嬢の人が粗悪品を渡したようにも思えないし、それに多分だけどあの金髪の人もそんなものを渡されたら気づくはずだ。だけどそれで何も文句一つ垂れないということはそれで十分ということなのだろうか。

二人が?マークを頭に浮かべている間にも金髪の女性はどんどんと魔法陣を書き進めていく。なんとも綺麗な魔法陣だ。ずっと見ていると魔本陣に吸い込まれそうなほどだ。人はなんの道具もなしにあそこまで綺麗な円が書けるのか。一切歪みのない、完璧な円だ。金髪の女性がちらっとこっちを見た気がしたが、気のせいだろう。手を前にし、三角形を作るように構えると、



「よーしできた。さあ、始めるぞ。」


「願うはかの者を癒す光。願わぬはかの者を蝕む闇。精霊よ、我が願いを聞き届け!『完全浄化(アーグビュート)』」



男の周りが白光に包まれる。とてつもなく大きな光だが、その混じりっけのない大きな光を見ても目が痛くなったり目の前が太陽を見たときにできるあれみたいにはならなかった。むしろ見ていて心地がいいくらいだ。光はどんどんと大きくなっていくが、円の外からは出でこなかった。おそらくあの魔法は円の中で濃度を高めてるのだろう。光の中から男の叫び声が聞こえてきた。



「うぎゃあ!痛え!痛え!あがががガガガががっ」



最後の方はもう人間の叫び声なのか分からないレベルに酷いものだった。痛いとかなんとか言っていたが、その実あそこまで痛いものだとここまで伝わるとは思いもしなかった。もしあの人が治ったとして、言語能力とかは大丈夫なのだろうか。初対面で一切話したことはないが。


光の濃度が濃すぎて中の様子は一切確認できない。現状確認できるのは、中で叫んでいる男と、その周りを囲むようにしてリーダーの無事を祈るかのようによく分からん祈りのようなもの捧げ、もう一個のパーティーも一応同じギルドメンバーだからか、男の無事を祈っている。そして、水でも被ったかのように汗だくになっている金髪の女性。どこからが吹いてきた風で髪の毛が上向きに靡いている。



「踏ん張りやがれよ髭男!おめえが痛さでくたばったらこっちもやり損になるからな!そんなことは許さんぞ!浄化はあと数十秒で終わる!」



徐に金髪の女性は手を上にあげる。



「こっからこいつをこいつから引き剥がす!さらに激痛が走ると思うが、覚悟しておけよ!いいな!」



金髪の女性は構えていた手の形を変えていく。まるで鳥を模したような形だ。しかし不思議だ。さっきより痛くなると言っていたのに何故なんの叫び声の一つも聞こえないのだろうか。あ、そういえば俺も体験したことあったな。何時だったかは忘れたが、受けた痛みってある一定ラインを超えるとなんも喋れんくなるんよなあ。



。。。は?待て待て待て。。。



俺は瞬時に冷静になった。なぜそこまで痛いのだろうか。引き剝がしと言っても影は虚構の存在 (メアリ調べ)。そんなもの、別に痛くもなんともなさそうなものだが。



「兄様。どうやら終わったみたいだよ。光がどんどん薄くなってく。それに、さっきまで感じていた影を今は全く感じない。本当に浄化はされたみたいだよ。でも、さっきいたのとはまた別のやつがいる。」



光の中から男性の姿が見えた。ばたりと倒れているそれは、俺の予想と反してしっかりと人間の姿をしていた。しかし、



「なあメアリ、あの人。」

「うん、精気を感じない、でも、死んでもいない。不思議な感じだね。」



金髪の女性は男を見ると一言



「あーあ、やっぱりこうなるか。」



そう言った。そのたった一言。その言葉は無事を祈っていたパーティーメンバーの彼女を見る目を荒ませた。しかし、何一つ彼女を攻めることをしなかった。彼らは知っていたのだ。汚染の進んだ人間を浄化させるとどうなるのかを。



「あー、そんな目で見ないでくれ。そもそも、、、。」



金髪の女性の目の色が少し変わる。そういえばさっきまでぐっしょりとしていた汗はどこに行ったのだろうか。女の肌はそんなものはなかったとでもいうように真っさらだ。



「一体いつ『浄化が終わった』と言った。勝手に終わらせてもらっては困る。私だって同じギルドのメンバーを手にかけるのは流石に重い。いいかい、若き兵士達。私の浄化はここからだ。よく見ていたまえ。」




優しい目つきになった金髪の女性はまた何やら始めようとしているのだろうか。全くもって理解が追いつかない。メアリも恐らくそうだろう。いや、この状況を理解できないのが俺だけというその置いてけぼり感をなくすためにも、誰かしらは俺と同じ境遇にいてくれ。



「ここからは実は簡単なんだ。魂の抜け殻って状態は文字通り、その者の魂が抜けた状態だ。では、その抜けた魂はどこに行ったのか。魂は抜けると死の世界へと向かっていく。しかし、それは抜けてから半日後のことだ。つまり、今ここには髭男の魂が漂着したまんまってことだ。何故わかるのかと言いたげな目をしているが、私の力とでも言おうかな。なあに、別に私だけの力ではない。。。さて、戻す方法を言い忘れていたね。さっきも言った通り簡単だ。」



「一体どんな方法を使うというのですか、魂を戻すなんて」



「言いたいことはわかる。この方法は簡単だが、とある条件があってな。それを満たしていないといくら君たちが方法を知ったところで、どうすることもできないんだ。」



一息つく。



「えーっと、髭男の魂はどっこかなあ。。。お、いた。」



金髪の女性は空を掴むようにし、それを男性の体に向かって思いっきりぶつけた。



「うっし、完了。ほら起きな髭男。朝、とは言わないが、目覚めの時だぜ。」



金髪の女性は男に手を差し伸べる。見た感じ少し老けたような印象を受けたが元々おじさんみたいな見た目だから大差はない。生まれたての子鹿のように差し伸べられた手を取りながら立ち上がろうとするが、力が抜けているのか座るのがやっとのようだ。



俺も正直腰が抜けるかと思った。目の前が真っ白に光ったとおもうと今度はその光の奥で大絶叫。しかもかなり痛みを含んだものだった。生まれてこのかたこんな声は聞いたことがないと断言できる。知らない世界がある。そう一括りにすればある程度理解というか分別はできる。事実人間は自分のできないことはそうしていることが多い。俺が今そうしているように。多分メアリもそんな感じじゃないだろうか。横目で見たが若干体を震わせている。周りから見たら幼い見た目のメアリがそうなってしまうのは仕方のないことだと思うだろう。



「ううああ」



うめき声しかあげられなくなってしまっている男を見るに、先の絶叫で喉が潰れてかつ復活の反動でしゃべられなくなっているのだろう。



「悪いね。言った通りだが、私は荒療治しかできなくてね。後遺症は残るだろうが、まああ私の魔力に触れているし、暫くしたら問題もなくなるだろうよ。」



男の仲間と思われる女が割といい勢いで金髪の女性に近ずいてくる。走るとは言えないが小走りより少し早いその足を運んでいる顔には光が伝はしっていた。ありがとうございまあああああす!と、とても女性とは思えないほどの声量で感謝している。さっきの大絶叫に匹敵するレベルで正直喉を心配してしまう。




「ははは。そんな大声じゃなくてもちゃんと聴こえているよ。良かったな。ちゃんとあんたのリーダーは生きてるよ。」




泣きながら頭を上下させる女性にそっと優しく頭を撫でる。登場の仕方こそ豪快だったがきちんと優しい部分を持ち合わせているのだなと初対面ながら少し感心している。




「で、だ。」




金髪の女性がこちらに振り向く。知らない顔だからその確認か、それとも入ってきた時には俺達を見ていたのだろうか。綺麗な顔立ちだし、変な勘違いをしてしまいそうだ。



「なんでしょう。」

「君ら、見ない顔だね。最近ここに来たのかな。匂いもここの奴らとは違う。それにここに来たってことは、そういう事だろ?」



金髪の女性はおもむろにギルドのカウンターに声をかけ、俺達がギルドに入る事を伝えてくれた。何も話していないのだが、何故わかったのか。ここには依頼に来る人もいるだろうに。なんだか頭の中を見られているようで擽ったく感じる。




「君ら、ギルドの受付はあっちだ。お節介かもだが話は付けてある。さっさと行きな。私はこの後仕事があるから、これで失礼するよ。」



なんとも優しい女性だ。そして仕事に対してとてもストイックだ。今度会った時には何かお礼をしなくては、男として廃るような気がする。ただでさえリードを引っ張られているのだ。



「あの、すいません。ありがとうございます。宜しければお名前を。あ、私の名前はユーリ・コルレスです。こっちは」

「メアリ・コルレスです。」


「ああ、悪いね。私の名前は、あー。私の名はカート・ビュバル。よろしくな。」



俺たちは握手を済ませるとお互いのやることをするために解散した。



ギシギシ響く床を歩きカウンターに向かう。そこにはカートさんに指示された人が既に色々と準備をしていた。手際のいいことこの上ない。さっきのやり取りからまだそこまで経っていないが、もしや。



「ようこそ。ギルド『エリウの豊穣』へ。歓迎しますよ。」

いやはや、リアルが立て込み過ぎて書いたは良いものの、投稿するのをすっかり忘れていました。


さて、今回のラッキーアイテムはペットボトルキャップの下についてるあれ。あれリサイクルに出すときしっかりと外さないといけないらしいですね。固過ぎて手では取れそうにないですね。ニッパーか何かで千切ったりするんですかね。それではこの辺で。

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