9話
教会で住み込みをしてから、三ヶ月程度たった。
人間になってからと言うもの、時間の流れが早く感じる。人間の寿命はたいして長く無いから、これではすぐに死んでしまうな……。
「さて、ここでの生活にもだいぶ馴れてきたかい?今日から午前中は、僕の仕事を手伝ってもらうよ。もちろん見習いとしての訓練も始めるからね。先ずは、僕からのプレゼントだ。これを着るといいよ」
手渡された服は軽装ながらも、教団のマークが刺繍された立派な物だった。短くて小さなマントも付いている。
「わあ!すごい!」
このマークは気に食わんが、今着ている服よりずいぶんいいな。
「フン……着てやろう」
「フフ、二人供良く似合ってるよ。じゃあ、僕について来て。まずは領主の館に行くよ。君達は後で立っているだけでいいから心配はいらない」
領主の館は、街の外れにある小高い丘の上だ。
ニコルが顔を見せると簡単に中へ通してくれた。
「領主様、ごきげんはいかがですか?」
「ニコル様、良く来てくれました。ちょうど良かった。実は、困った事がありまして……」
この領主の気の使いよう……やはり教団の力は強いようだ。話しが少し長くなるという事で、オレ達二人は、別室で待つ事となった。
「あ、これすごく美味しい!」
「フム、スィーツか?……我が居城でありとあらゆるスィーツを食べてきたこのオレを唸らせるスィーツなど、めったに有る筈が……うめぇ~!!」
「ノベル、あんたバカでしょ……!?」
しばらくしてニコルが話しを済まし、帰ってきた。
「やあ、おまたせ!次に行くよ」
「……いいだろう」
「ノベル君、腹がちょっと出てないかい?」
「気にするな。とっとと行くぞ、ニコル!」
「……ハァ。ノベル食べ過ぎよ」
ニコルはその後も、街のあちこちで色んな人と話しをする。いずれも困った事がないかとか、相談に乗っているようだった。
「さてノベル君、君の出番だ。今からこの道ぞいにある溝のドブさらいをしてもらう。近所の人がみんな困っててね。はい、このスコップでよろしくね!また様子を見に来るけどできるかい?」
「チッ……いいだろう」
「ハハ……アイラはこの薬を、地図通りにみんなに届けて欲しい。大変だけど出来るかい?」
「大丈夫です」
「良し、じゃあヨロシク~!」
ドブさらいか、何でオレがこんな事を……
く、やはりこの体では中々はかどらんな……ん?
「おや、ドブさらいかい?偉いね!」
「助かるよ君。ありがとね!」
通りすがりに、街の人間が声を掛けて来る。
まあ、感謝されるのは悪くないな……
ドブさらいが終わった頃、ニコルがアイラを連れて帰って来た。
「終わったかい?どうだった?」
「まあまあだ」
「楽しかったわ」
「フフ、そうかい。いいかい二人供。我が教団の教えは、人を幸せにする事で、自分達も幸せになろうって事なんだ。それが分かったらもう一人前さ!明日からも頑張っていこうね」
……偽善だな。理想でもあるが……いずれも人は、己の欲望には勝てんよ……。