4話
クク、早速ブクマを捧げる者がいるとは……
良かろう、褒美の我が妄想を受けとるが良い!
「ふぁ…… 朝か。こんなにぐっすり寝たのは、何百年ぶりか…… 」
ノベルは、粗末なベッドから起き上がると、窓から外の景色を眺める。やはり今回の出来事は、夢などでは無かった。自分の姿は十歳の子供、名前はノベルである。魔法も使えず力も無い。
「どうすれば、力が戻る……」
握った拳を目の前に持ってきても、まるで魔力を感じない。
勇者達め、一体何の魔法を使ったのか……。
だがそういった憎しみの気持ちも、何故か薄らいでいく様な気がする。
「フッ。 不思議だな。こんなに貧弱で不便な体になったのに、新しい何かに期待している私がいる。むしろ力など今は、どうでも良いかもな。暇潰しにしばらくこの体を楽しむか! ……ハッ!?」
「何を朝からブツブツ言ってるの!? 今日の水汲みは、ノベルの番だよ! 」
不意に後ろのドアから顔を出したアイラが、朝からムッとしている。
「あぅ!?」
くっ……私とした事が、情けない声を……
「ごめん、そうだったね。 行って来まーす!」
むう。やはりこの娘は、苦手だな。声を聞くだけで体がこわばり……緊張?そうか、これが緊張というやつか……。
朝から水を汲みに出かけ、薪を切り、木の実などを集める。昼からはデニーの畑仕事をクタクタになるまで手伝った。
そして邪神であった日々の記憶は徐々に薄れ始め……そんな毎日を過ごしているうちに、あれから一ヶ月が経った。
今日は鑑定の儀式みたいだ。
場所は村の近くにある街の教会で取り行う決まりらしい。村長が村の馬車で十歳になる数人の子供達を街まで運ぶ。馬車に揺られて子供達は、大はしゃぎだ。
フム、だいぶこの体と村の暮らしにも馴れてきたな。しかしなんだこの馬車は!?
こんなに揺れる乗り物など乗った事がない。座っているだけなのに、ここまでオレの尻にダメージが入るとはな。
クク!……だが実に面白い!
やがて馬車は街の門をくぐる。村にある柵と違って、街は高い壁に囲まれている様だ。やがて教会とおぼしき建物の前に馬車は止まり、ノベルは初めて人間の街へ足を踏み入れた。
……ほう、小さいが良い街だな。他の種族もチラホラといる。
ノベル達は村長を先頭に教会の中へと入る。広々とした部屋には、神父達が笑顔で数人の子供達を鑑定しているようだ。
「村長の私は、ここから先へ進めない。お前達だけで儀式を無事に終わらすんだ。教会の外で待っているからな。しっかりやれよ」
「分かりました村長さん。いい、ノベル!私の手をしっかり握って!絶対迷子になっちゃダメよ!」
「え~!? ……うん」
まったくアイラの世話焼きにも困ったものだ。最初は暴力的で苦手だったが何の事は無い、ノベルの事を好意的に思っているだけのようだった。今も迷子になるなとか言いながら、手を握って顔が少し赤面している。この一ヶ月で、一連の行動は興味を引きたいが為だと十分推測出来た。
……まあアイラの事などは、どうでもいい。
さて、この教会では一体どんな神があがめられているのか、楽しみだな。
ノベルは、正面にある石像の神の顔をマジマジと見る。そして石像の神と目が合ったと思った瞬間、ノベルの意識は、遠くにとんだ。