9話 盗人 (side アリア)
!?
ここは!?
……っつ。
胸部装甲が剥がされてる?
……。
思い出した!
私は魔晶獣の体当たりで。
体は?
問題なく動くか。
どれだけ気を失っていた?
「アリアさーん」
フィーネか。
拡声器は動くか?
「フィーネ、ここだ」
問題ないようだな。
「無事だったみたいね〜」
「何とかな」
「動けそう〜?」
「ああ。機体の方も胸部装甲が破壊されただけで、動くことには問題ないようだ」
「ゴツゴツして可愛くない見た目だったけど、そこに救われたみたいね〜」
「ああ、重装甲に感謝だな」
「落とし物は~?」
落とし物?
そんなもの、あるばすもないだろう。
私の剣だって……
「無い!? 私の剣がない!」
「操縦席に穴が空いてたものね〜」
どこかで落としたと言うのか!?
くそ、記憶がないせいで、いつ失くなったのかさっぱりわからん!
「他にも何かあるんじゃないの〜?」
確かに。
他にも何か失くしているか?
腰に差していた短剣も無いな。
後は……。
「なっ!?」
「どうしたの~?」
「箱が開いている」
「え〜、それってあの怪しい商人から買った?」
「そうだ。どう頑張っても開けられなかったが素晴らしい意匠だし、お祖母様の踏台にちょうどいいと思ってな」
「ふ〜ん、それが開いていると。中身はなんだったのかしらね〜」
「さあな、商人も中身は知らんと言っていたしな」
「そうか〜、でもそれって、衝撃でどうにかなったって訳じゃ無さそうよね〜?」
確かに。
ということは……。
私が気絶している間に、盗みを働いた輩がいると言うことか!
「このような状況で窃盗とは、許せんな」
「そうね〜、でもその盗人さんはどこに行ったのかしら?」
「さあな? 盗人の行動など、わかるわけもなかろう」
「う〜ん」
くそ。
機体は壊されるし、剣も短剣も盗まれるし。
今日は何て言う日だ!
「姫様! ご無事でしたか!」
あの機体はラージェスか。
「ラージェス、何とか無事だ」
「流石は姫様ですな。あれだけの魔晶獣を退けるとは」
「魔晶獣? なんのことだ?」
「? 姫様が戦線を離脱されたときに、何匹かの魔晶獣が姫様を追って行ったはずですが」
「いや、私は知らんぞ」
「はて? ではあの魔晶獣達はどこに?」
一体どういうことだ?
「ね〜、アリアさん。ラージェスさんが言ってる魔晶獣って、あれじゃない〜?」
む。
確かに、結構距離があるが。
というかあの動き、あいつら何かと戦っているのか?