4話 使えそうなもの
やっぱりか。
あいつ、何やってるんだ。
赤ん坊と母親?
くそっ、お人好しが。
「申し訳ありません、この先は一人で逃げてください」
「は? どう言うことだ? 今の悲鳴か?」
「はい、どうやら知人のようなので」
「は? お前なに言ってるんだ? 落ち着けよ、できることがないって言ったのはおまえだぞ。さっきまでの冷静さはどこ行ったんだよ?」
「言ったはずですよただの一大学生ですと。なので友人を見捨てることはできないんですよ」
「意味がわからん」
「大丈夫です、自分でもよくわかっていませんから」
「ちょっ、は? 何で店に戻るんだよ」
使えそうなものはなんだ?
電気も火も使えない……。
「おい、なにやってるんだ! なんかそろそろやばそうだぞ」
それならこれとこれと、この辺か?
「すいません、お店の商品をいただきます。お金はこれで足りるはずです」
「お前、こんなときでも。本当に冷静なんだか馬鹿なんだかわからんやつだな」
「失礼します」
よし、まだ無事だな。
さっきの奥に見えたやつに比べればかなりサイズが小さいからな。
なんとかもつと思ったが。
「おい、しゃがめ!」
「先輩!?」
「いいから、しゃがめ!」
「はい!」
頼むぞ効いてくれ!
よし!
どうやら嗅覚やら味覚やらに近いものはあるみたいだな。
「はやく、こっちへ!」
「はい!」
とりあえずは凌げたか。
「先輩、何をしたんですか?」
「説明は後だ。三人とも、あそこに見える男の方に逃げてくれ。追い付けるようなら一緒に逃げるんだ」
「先輩は?」
「あいつの注意を反らしてから、追いかける」
「そんな……」
「大丈夫だ、必ず追いかける」
「……」
「急げ!」
「! わかりました。その代わりきちんと追いかけてきてくださいよ」
「わかった、約束する。だから急いでくれ」
「はい。さあ、赤ちゃんは私が抱きます。急ぎましょう!」
……行ったか。
後はあの怪物だな。
刺激物が通用するのはわかった、勝てないまでも逃げるくらいはなんとかなるかもしれないな。
約束だしな、何とかして生き延びないと。