3話 異変
「それじゃあ、出発しましょうか」
「その前にお互い名前ぐらいは名乗らないか? 」
「それもそ!?」
「こりゃなんの音だ!?」
音?
音じゃない。
これは鳴き声だ。
これだけの大きな鳴き声となると、かなり大きな生き物?
下手に外に出るのは危ないか。
なんとか外の様子を確認したいな。
カーブミラー!
いいところに。
「申し訳ありません、予定変更です。荷物を置いて直ぐに動けるようにしていてください」
「どうするつもりだ」
「まずは外の様子を伺います」
「どうやって?」
「玩具でもなんでも構いません、双眼鏡はありませんか?」
「たしか子ども向けの玩具があったはずだ。たしかこの辺に、っとあった。ほらよ」
「ありがとうございます」
おもちゃにしては良くできてる。
これならあのカーブミラーが見えるかも。
……見えにくいな。
空になにかいる?
それなりに距離はあるのか。
というか、あの距離で鳴き声がここまで届いたのか?
「外に出てみます」
「お、おい。大丈夫なのか?」
「出てみないことにはわかりません」
「お前、無茶苦茶なやつだな。冷静なのか馬鹿なのかどっちなんだよ」
「どちらでもないですよ。ただの一大学生です」
「は、本当かよ。とんだ大学生だな」
これは……。
予想以上に悪い事態だな。
うっ。
「すみません、トイレを借ります」
「おいおい、戻ってくるなり何事だ? えらい顔色が悪いが大丈夫か?」
あれはなんだ?
生き物なのか?
だがあの行動は……。
「大丈夫なのか?」
「申し訳ありません、もう大丈夫です」
「大丈夫には見えないが。顔色が悪いままだぞ」
「問題ありません。それよりも外の状況の方が大問題です」
「何が起こってる?」
「謎の生物による虐殺です」
「は?」
そうだ、あれは捕食なんかじゃない。
ただの虐殺だ。
「信じられないかもしれませんが」
「いや、信じるぞ。お前の顔色と行動を見れば嘘とは思えん」
「ありがとうございます」
「それで、どうするつもりだ」
「外の様子から、建物の中が安全とは限らないように思えます。可能な限りここから離れると言う選択肢が一番かと」
「わかった、ならばどう逃げる?」
「申し訳ありません、情報が不足しすぎていて……騒ぎと反対の方向に逃げるくらいしか思い付きません」
「わかった」
「では直ぐに逃げましょう。その前に外はかなり凄惨な状況です。ですが声もリアクションも無しでお願いします。最悪こちらの音に反応する可能性もありますので」
「わ、わかった」
「先導します。行きましょう」
大丈夫、こちらに気付いた様子はない。
!?
増援?
仲間がいるのか?
とにかく合図を。
気付かれる前にここを離れないと。
「なん」
「静かに、あれが何でどういう目的なのかはわかりません。そして今できることは逃げ延びるだけです」
「そう、だな……」
「行きましょう」
「こっちにくるな! この鳥やろー!」
っ!?
「どうした?」
この声は……。