27話 駄目すぎる
「と、当事者だと!? 貴様、なにを言っている」
「何をと言われてもな。我輩、あるがままを話しているだけなのであるが」
うーん、ここで証拠はとかは流石に聞けないわな。
なんせ三百年前を俺は知らないからな。
確かめる術がない。
「ラージェス殿は我輩達が長寿であることを、存じているかと思うのだが。三百年程度、我輩達にとってはそこまで遠い出来事ではないのであるな」
「だがしかし、どうやって証明する!」
あー、それは言わない方が。
「証明等する必要はないのであるな」
「なんだと!?」
「証明したところで我輩には何の得もないのである。むしろそこにかける労力を考えれば、損しかないのである」
そりゃ、そうなるよ。
ドリターラウさんの言うとおりだ。
「ふん、所詮は機人種。忌み嫌われる種族だな」
「いや、ラージェスさん。流石になに言ってるかわかりませんよ」
「な!? ヤイチ?」
「ほう」
「ラージェスさんの話を聞いていても、ドリターラウさんが話した内容を明確に否定できる材料が見つからないんですよ」
「何を言っている?」
「いえ、ただ私が今聞いた話を整理するとそうなるというだけです」
「こいつら機人種が工場や魔動機兵を産み出した張本人なのだぞ」
「ええ、その部分についてはドリターラウさんも否定していませんね。ですがその後の世界に混沌と分断をもたらしたの部分はドリターラウさんが明確に否定しています。それを彼らが実行できなかった理由もしっかりとのべられていますし」
「それは」
「私にはそれに対して、事実を証明しろだの、忌み嫌われた種族だのラージェスさんが無茶苦茶な理屈を振りかざしているようにしか見えないのですが」
「そんなことはない!」
「では実際に三百年前の証拠を出されたとして、ラージェスさんはそれが事実かどうか見分けられるのですか?」
「……」
「もちろん、ラージェスさんがドリターラウさんと同じように当事者だと言うのであれば、それも可能なのかもしれませんが」
「私は百年も生きていない」
「ならば証拠の証明は、むずかしそうですが」
「そんなもの光神教の連中に任せれば良い」
光神教?
宗教かなんかか?
一気に胡散臭くなってきたぞ。
「ふむ、その光神教こそが我輩達にあれを作らせた者達なのだがな」
「なに!?」
うーむ。
胡散臭いの通りすぎて、分かりやすすぎる展開ぽいね。
「当時試作段階でしかなかったあれを、無理矢理生産させ世界中にばらまいたのはやつらであるぞ」
「そんな事があるはずが」
「あの、ラージェスさん。もしかしてその光神教の聖地とか過去の重要施設とか工場と魔晶獣であふれたりしませんか?」
「ヤイチ、何故それを!?」
はあ、マジかぁ。
「機人種達の執拗な襲撃によって、多くの聖地や重要施設が奪われているのだ」
「この世界に来たばかりの彼等が、なぜ光神教の聖地や重要施設を的確に襲えたのでしょうか?」
「それは……たしかに」
「それならば自分達の力を大きくするために、この世界に来たばかりの新しい種族をだまして、その技術力を利用する」
まあ、流石にこんな単純な話ではないと思うけれど。
「そして無理矢理作らせた大量の未完成品を配置したら、暴走して逆に追い出されましたって話のほうがあり得る気がするのですが」
これじゃ、コテコテの陰謀話だよな。
「ほう、ヒサナギ殿はまるで現場を見ていたようであるな」
おいおい、まさか本当にそうなのか?
こんなセコくて分かりやすすぎることするのか。
その上安定していない兵器を暴走させて自滅とか。
光神教、大丈夫か?
いや、大丈夫じゃないか。
そのせいで世界中に工場が散らばってるからな。
駄目すぎるだろ、光神教。
 




