26話 忌むべく種族
「あの、ラージェスさん?」
「ヤイチ、奴に近付くな!」
「それは危険だからという意味でですか?」
「危険、確かに危険な種族だ」
種族か。
いきなり爆発するとかそういう感じなのか?
「ふむ、危険か。それは工場をこの世界に産み出した存在だからであるか?
それとも魔動機兵を産み出した存在だからであるか?」
工場も魔動機兵もキジンシュって人達が作ったのか。
それはいいんだけど、それが何で近付いては駄目って話になるんだ?
「そのどちらもだ。この世界の国々に戦乱と分断をもたらした忌むべき種族め」
「ふむ、確かにどちらも我々が作り出したものだが、それを望み戦乱へと導いたのは貴様達この世界の先住者達ではないのか?」
先住者?
「詭弁を! 貴様らがこのような物を作らなければよかっただけだ!」
「詭弁はどちらであるのか。三百年前、この世界に来たばかりでなにも知らぬ我輩達に、素知らぬ顔であれらを作らせたのは、先住者達なのであるがな」
なるほど。
ドリターラウさん達、キジンシュの人達も俺達と同じような感じでこの世界に来たのか。
「それこそ詭弁ではないか! 貴様らが野心を剥き出しにし、世界を混沌に陥れるために、工場をばら蒔いたのだろう!」
「はあ、情報操作とはかくも恐ろしいものであるな」
「なにを言っている!?」
「では教えてくれ、ラージェス殿。魔力というものが存在しない世界から来たばかりの我輩達が何の研究も無く、ごく短期間で工場のような高度なものを作り出せるというのだ?」
「そんなものこの世界に百年もいれば、可能だろう!」
「はあ、ラージェス殿は歴史をしっかりと学ぶべきであるな。あの工場を我輩達が産み出したのはこの世界に来た一年後であるぞ」
一年ね。
基準がわからないからな、長いのか短いのか判断が難しいところだけど。
新技術をたった一年でって言うのは、無理そうな気はするな。
「それは……」
うん、ラージェスさんもちょっと苦しそうだな。
「さらに言えばあれを世界中に配置したのは先住者達であるぞ。いくら技術が優れていようと、この世界に来たばかりの我輩達が、短期間でこの広い世界のしかも要所を狙って配置など出来るわけがないのである」
配置場所とか地理を知らない人達には難しいよな。
ラージェスさん、さらに苦しそうだな。
それにしてもドリターラウさん、詳しすぎないか?
まるで見てきたように話すし。
三百年前の話だろ?
「いや、おかしいのは貴様だ! なぜ三百年前のことを、さも当事者であったかのように話す!」
「簡単である。何せ我輩、その当事者の一人であるからな」
「な!?」
歴史の生き証人かよ!
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