25話 機人種
「初めまして、ドリターラウさん。私はヤイチ・ヒサナギ」
「う、うむ。ヒサナギ殿、その、これはいつになったらほどいてもらえるのだろうか?」
「なにか?」
「うむ、いや、何でもないのである」
「ヤイチ、そろそろ許してやったらどうだ?」
うーん。
取り敢えず、締めるところは締められたし。
まあいいか。
「ふう、ひどい目にあったのである。えーと、名前をまだ聞いておらんかったな」
「ラージェス・デュアナン」
「デュアナン殿か。感謝するのである。もう少しで我輩の貴重な頭脳が、この世界から失われるところであった」
「はあ、大したこともしておりませんが」
「ふむ、謙虚なのは美徳かもしれんが、過ぎるのもまたどうかと我輩、思うのであるが」
「……」
ラージェスさん、早速扱いに困ってるな。
ここまで自己評価出来る人ってのは、こっちの世界でも珍しいのかね?
こういうことが普通に出来るってのは意味才能なんだろうな。
まあ、それはそれとして。
「ドリターラウさん」
「な、なんであるか?」
いい感じに警戒されてるな。
「なぜ私達を襲ったのですか?」
「我輩は工場の核を回収しようとしただけである」
核っていうのは、あの大きな魔晶石みたいなやつか。
「回収の邪魔になりそうなものを排除しただけ、ということでしょうか?」
「であるな」
「こちらに敵意はないと?」
「うむ、あの核さえ手にはいるのであれば興味もないのであるな」
うん、これ本気で言ってるんだろうな。
当たり前でしょ、みたいな顔だし。
ここまで来るとむしろ清々しい。
「貴様!」
「ラージェスさん、この人に怒るだけ無駄だと思いますよ。なんせ本気で言っていますから」
「な、ヤイチ、こいつの肩を持つのか?」
「いえ。この手のタイプに怒ることの、意味の無さを知っているだけです」
「だが、しかし」
「こちらが怒った所で、私達にとってなにも得られるものはありません。ただ疲れるだけですよ」
「ほう、よくわかっているではないか」
はあ、これも悪気がないんだよな。
まあ、けじめはつけてもらうけどね。
「ですので」
「あががががぁぁぁ」
「や、ヤイチ?」
「体でわかってもらうのが一番早いんですよ」
「我輩の頭がががががが」
「それでは質問を変えます。あの工場に手傷を負わせていたのは、ドリターラウさんでしょうか?」
「ふう、ヒサナギ殿は我輩の頭をなんだと……ひっ、そ、そうである。我輩がつけた傷である」
この人なのかあの機体なのかはわからないが、かなりの戦力があるってことか。
「何故、工場の核を?」
「我輩の研究の為であるな」
「その研究とは?」
「魔動機兵の研究であるな」
ふーん、あのロボットの技術者かなんかか。
「ドリターラウ殿、つかぬことをお伺いする」
ん?
ラージェスさん?
「あなたはもしかして機人種では?」
キジンシュ?
「その通りであるが、それがなにか?」
「ヤイチ、そいつから離れろ」
?
「む?」
「私にはチキュウジンを守るという任務がありますので」
「忌むべき存在である、我輩達に関わらせる訳にはいかないというわけか」
「申し訳ない」
???
いきなり空気が……。
キジンシュってのが問題なのか?
誰か説明してもらえないでしょうか……。




