16話 激痛
うーん、艦が行ってしまった。
さて本当にどうするかな。
とりあえず艦を追うか?
ん?
艦からなんか出てきたぞ?
あれは……。
人型ロボットか。
艦から離れて、なにするつもりだ?
キョロキョロしてるな。
なんか探してるのか?
こっちに来る!?
不味いな、まさかここまで執拗に追いかけてくるとは。
この靴も機動力はあるけど、あの体格差はなぁ。
逃げ切れるか?
まあ、考えたところでしょうがないか。
とりあえず逃げの一手だ!
「お、おい! 待て、逃げるな!」
この状況で、待てと言われて待つやつはいないだろ。
「逃げるな。おい! 本当に戻れなくなるぞ」
いや、既に戻れないしね。
「くそ、ちょこまかと。人の身でなんて早さだ」
だねー。
これだけ体格差があるのに、追い付けないって。
この靴凄い出力だな。
「待てと言っているだろう! 我々に貴様をどうにかするつもりはない!」
いやいやいや。
それって何かする人達の常套句じゃないの?
「頼む、待ってくれ。貴様を無事に連れ帰らないとヨシノ殿に私が殺されてしまう」
祥乃?
「私を助けると思って。たのむ!」
なんかこの人物凄く必死なんだが。
本気で焦ってるというか、怯えてるのか?
祥乃のやつ、なにしたんだ?
「そうだ、聞き入れてくれて感謝する」
今から戻ればまだ間に合いそうっ!
「お、おい。どうした!?」
な、体が。
身体中がバラバラになりそうだ。
「うがああああああああ」
痛い痛い痛い痛い。
「な、だ、大丈夫か!?」
「あああぁぁぁぁぁ!」
痛い痛いイタイイタイぃぃぃぃ!
「お、おい」
「……」
……。
……い……。
………………い!
なにか聞こえる?
「おい、大丈夫か。生きてるなら返事をしろ!」
死んでたら返事できなくないかと?
「おい!」
「聞こえてる。なんとか生きてるよ」
「生きていたか!」
「なんとか……」
「いきなり叫び出して、落下し始めるたからな。地面にぶつかる前に、回収したとはいえ、死んだのかと焦ったぞ」
どうやら痛みで気絶したみたいだな。
それでこの人に助けられたってことか。
「ラージェスさんでしたっけ? 助けていただきありがとうございます」
「貴様に何かあったらヨシノ殿に殺されかねんからな」
「理由はどうあれ、助かりました。本当にありがとうございます」
「気にするな。そもそもチキュウジン達を助けるのが今回の我々の任務だ。それより体は大丈夫なのか?」
体?
体は……。
くっ!!
「相当傷むようだな。一体何事だ?」
「わかりません、私が聞きたいくらいです」
「チキュウジン特有の症状なのか?」
「どうなのでしょうか? 今まで、このような症状になったことはありませんし」
「うーむ」
「いつつ」
少し痛みになれてきたか?
「おい、何をしている」
「いえ、まずは立とうかと」
「貴様は何を考えているんだ。今は差し迫った危険があるわけではない、まずは休養をとるのだ」
「ですが、このままだと艦に追い付くのがかなり難しくなるかと」
「負傷兵がくだらんことを気にするな。先程も言ったであろう、差し迫った危険はない。ならばまずは休養だ」
「ですが」
「大丈夫だ。何かあっても私が貴様を守ってやる」
……。
いつつ、駄目だな。
無理したところで、どうにかなりそうにもない。
ここはラージェスさんの言うとおりにしておこう。
「わかりました。ラージェスさんのお言葉に甘えさせていただきます」
「うむ」
「俺、いや私はヤイチ・ヒサナギ。どうかよろしくお願いいたします」
「ほう、ただの阿呆かと思ったが」
誰が阿呆だ。
いや、過程がどうあれ結果があれだったしな。
あんまり否定できないか。
「既に聞いているかもしれんが、私はラージェス・デュアナンだ」
駄目だな。
気が抜けたか?
また意識が……。
「おい! ヤイチ!」
「だ、大丈夫です。少しねむ、る、だけ、で……」
もう、無理。
お言葉に甘えます、ラージェスさん。
 




