12話 クロスカウンター
「よう、無事だったようだな。たいしたもんだ」
「頂いたコンビニの商品のおかげで命拾いできました。西広目さん、ありがとうございました」
ほんと助かりました。
ただ手を洗い終わってから話せませんか?
手がねちょねちょしてて。
「ん?ああ、祥ちゃんに聞いたのか。礼なんかいらねーよ、助けてもらったのはこっちだからな。というか礼を言うのは俺のほうだしな。えーと」
「毘沙凪 八壱、苗字でも名前でも好きなほうで」
「ありがとうな八壱」
「先輩、本当に無事でよかった」
今度は祥か?
「ん? 約束しただろ?」
「あはは。そうだよね私と約束したもんね」
「ああ」
「私との約束、守ってくれたんだよね…」
「ああ」
祥?
背中に?
「先輩」
「どうした?」
「ありがとう」
「気にするな」
「うん。でも…ありがとう」
「おう」
なんというか、しおらしいこいつは珍しいな。
「あー。取り込み中にすまんが、ちょっといいか?」
「と、と、取り込みちゅって。私と先輩は、そ、そ、そんなんじゃないし!」
「お、おう、そうか、それは悪かったな。それでな八壱、お客さんだ」
俺にお客?
誰だ?
「おい! チキュウジン!」
この声は。
「アリアさん?」
「気安く名前を呼ぶな!」
な!?
拳!?
「……」
「ク、クロスカウンター」
祥乃、よくそんな言葉知ってるな。
なんて現実逃避してる場合じゃないか。
やっちまった…。
「ア、アリアさん? 大丈夫ですか?」
だめだ。
完全に気絶してる。
「アリアさ~ん、どこに行ったの~」
ええっと、どうする?
このままここに放置って手もあるが。
フィーネさんだっけ?
話せば通じそうな人ではあったけど。
「姫様ー、姫様ー」
もう一人の人は…。
見るからに怖そうだな。
「ひ、姫様!」
見つかった!
「おい! 貴様、姫様になにをした!」
「えーと」
「ええい、そこを動くな! 叩き切ってくれる」
…まずいな。
「ま、待ってください。誤解です」
って剣筋が見える?
なんだこれ?
「何が誤解なものか! 現に姫様が倒れているではないか!」
……。
それもそうだな。
どうしたものか。
「ラージェス様~、落ち着いてください~」
「この、ちょこまかと!」
フィーネさん、そんなやんわり言われても止まりそうになんですが。
「はあ~。ラージェス・デュアナン! 止まりなさい!」
!?
「は!」
「ラージェス様、このチキュウジンにお話が聞きたいのでお待ちいただけますか?」
「は、了解いたしました」
ほんわかしてる人なのかと思ったが…。
なかなか迫力のある人だね。
能ある鷹は爪隠すか。
するどい爪に襲われないように気を付けないとな。




