P.9
梶原のやつ、梶原のやつ、梶原のやつ!!!!!!!!!
あいつ、俺も詐欺師だって、物を奪うのが趣味なのは親譲りだって言って回りやがった!!!! 俺が夏野さんを奪い取ったって、夏野さんも簡単に騙される軽薄な奴だって戯言かましやがった!!!! 百歩、いいや一兆歩譲って俺はいいよ。でも夏野さんは完全に無関係だろ!? 好きだったやつのこと、貶めるなんてあり得ないだろ!?
梶原が根っこから優しいってことは良く知ってんだよ……。中学の頃、自分が不利になるってわかってても、いじめられてる俺を守ってくれたのはあいつなんだから。だから、本当に悪いのは、この状況作ったのは。きっと俺なんだ。梶原の憎悪を煽ったのは俺だ。あと一日早く、夏野さんとのこと話すって決めてれば。そうじゃないか、あの告白を受けた日に、離さなきゃいけなかったはずなんだ。根っこを腐らせらのは俺なんだよな。でも、それでも夏野さんは守らないと。
それと父さん帰ってこれないって。分かってたわ。父さんにとって家族が大事なのもよーくわかってるけど、父さんの研究にには今苦しんでる何万って人の命がかかってる。それどころか、これから苦しむかもしれない途方もない数の命がかかってるんだ。「世界は広い。狭く考えるな。無責任で申し訳ないが、俺はお前がこれを乗り越えられる強さを持ってると信じてるぞ。でも、それでも無理なら、安心しろ。どうとでもしてやる。いいか? 世界は広いんだ」って、それが父さんのメッセージだった。
頑張るよ、父さん。父さんは誇りだ。それが俺を奮い立たせてくれる。