P.46(19冊目)と、P.8
息子が亡くなった、そんな連絡を受けた。一連の真相を知る人物は全て鬼籍に入り、何も分からないかと思われた。だが、息子の手記により全ては明らかとなった。妻を犯罪に走らせ、息子を助けられなかった。全ては、私の責任である。伝染病の薬の開発など、見ず知らぬ者の苦しみなど、最優先にすべきではなかった。私は、自分が愛するものを知りながら、最も守るべき者を……幸せを願う相手を見誤ったのだ。この手を、もう動かせない。
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息子のことを聞いた。私が詐欺を働いたことを引き金に、とんでもない結果を引き起こしたらしい。かくも世の中とは不安定で興味深いものである。きっかけなんて、なんでもいいんだ。私が詐欺をしたのも、馬鹿すぎたあいつに痛い思いをさせてやろうと思っただけなんだから。まぁ、そしたらくせになったのだが。
ちょっと小突くだけで、みんなすぐに心の暗部を見せるのが実に愉快だった。金に困ってないし、なんなら滑稽な姿をさらしてくれたお礼に差し上げてもいいほどであった。
慎のやつも、聞いた内容だとそのお友達にきっかけあげたのは慎なの、笑える。裏切りに裏切りで返されたってだけではないか? こんな風に思えるのも、私が悪の心だけを愛でてしまったからなのだろう。
ここまでお読み下さった方。本当にありがとう、ございます。あなたの人生に幸あれと、心から願わせていただきます。