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異世界美少女ハンターは婚活惨敗おっさんの手料理に夢中!?  作者: 水谷 耀
中古ゲーム機で繋がる、2つの世界。
5/59

第5話 クエストいたしません!

以前活動報告でお知らせいたしました、改稿作業中です!

現在、第5話まで改稿しました!

よろしくお願いします!(2018年10月2日現在)

 クエストフィールドに到着した俺はすぐに異変に気がついた。


 自分の「体力ゲージ」並びに「スタミナ」が、笑えるほど少なかったのだ。


「くそっ、コック飯食い忘れたか」


「異世界ハンター」ではクエストに行く前に、村のコックが作る飯を食べる必要がある。

 忘れてしまうと、体力やスタミナゲージが劇的に減ってしまうのだ。


 学生時代に屈強なハンターとして名を馳せた俺としたことが、凡ミス中の凡ミスをおかしてしまった。


「ツイてねえな。クエストリタイアも面倒だし、このまま行ったるか。まあ死なんだろ」

 

 3DLのスティックを操作し、主人公を動かそうとした。

 だが、主人公のエルフはピクリとも進まない。


「あれっ、故障か?」


 カチカチッと何度も操作を試みる。


 なんだよこれ、壊れてんじゃん!


 やはり中古はこの程度のクオリティだ。

 夏木め、新品同様とか適当なこと言いやがって。

 いぶかしげに、改めて中古3DLを眺めまわす。

 

 確かに見た目は新品のようである。

 しかし、機体を裏返した時にその印象は覆った。

 

 大きくて奇妙な図形が、はっきりと塗り付けられていたのである。

 まるで百合の花をかたどったような厳めしいソレは、何かの紋章を示しているようだった。


「これか、夏木が言ってたのは……」

 

 たぶん前の持ち主の趣味だろう。

 どこかで見たような気もするが、思い出せない。

 

 まぁ、そんなことはどうでもいい。

 問題はコイツが動かないことだ。

 

 せっかく金出してソフトを買ったのに、これじゃドブに捨てたも同然だ。

 イラつきながら、それでも諦めずにスティックをいじくる。


 すると、やっとエルフが動いた。


「良かった、壊れてな……」


 そう言いかけた俺は、開いた口が塞がらなくなった。

 理想のエルフが、こっちに向って……走ってくる……!


「え、え、え!?」

 

 訳が解らず叫んだ。

 もしかしてこれも新しい機能か!?

 

 エルフは画面ギリギリまで接近し、やっと止まった。


 巨大なドングリをくりぬいた初期装備、「ドングリアーマー」を着つけているエルフは金の髪を乱しながら肩で息をしながら、一生懸命呼吸を整えている。

 そしておもむろに顔を上げ、画面越しに俺と目を合わせた。


 息を飲むように、美しい娘だ。


 彼女は大きな碧眼をキラキラさせて、弾けるように俺に笑いかけた。


「マスター! やっと会えましたね。フィーリアは待っておりましたですぅ!」

「ふぃ、フィーリア?」

 

 天使のような笑顔のまま、畳みかけるように彼女は喋る。


「マスター、フィーリアはクエストに行きたくありません!」

「は?」


「クエストいたしません!」

「え、ちょ、なんでだよ! ゲームの主人公だろ?」

 

 俺はかなりテンパっていた。

 ゲームの中の美少女と、普通に会話をしていたのである。

 今思えば、狂っていたとしか言い様がない。


 美少女は恥ずかしそうに答える。


「フィー、お腹空いたもの」

「へ?」


「何も食べてないもの」

「ごめん、コック飯のことか? それなら今からリタイアするから……」


「マスター、食べさせてですぅ!」

「俺が!?」


「今からそっちに行きますぅ!」

「ちょ、でも……どうやって?」 

 

 全くの愚問だ。

 少なくともゲームのキャラに聞くことじゃない。


「ええと……」


 エルフの美少女はあたりをうろちょろ探り始めた。

 目をつけたのは、ギルドからの支給品が入っている支給箱だ。


「よいしょっと」

 

 美少女は上半身ごと支給箱を覗きこむ。

 その拍子にドングリアーマーのスカートから、パンツが俺に丸見えになった。


「マスターぁ、見えますかぁ?」

「見えてる、見えてる!」


「フィーには見えませんけどぉ」

「いや、違う。その、なんていうか……」


 俺は紳士だ。女性に「パンツが丸見えだ」などと、言えるはずがない。


「し、下着が……見えてる」

 

 絞り出したワードがこれだった。

 だが余りにも小さな声だったのか、美少女には聞こえていなかったようだ。


「うーん、これじゃないのかなぁ。よいしょっ」


 美少女は支給箱から抜けだした。

 次に目をつけたのは、隣の納品箱だ。

 こちらはフィールドで、「納品アイテム」と呼ばれるものを採取した場合に使われる。


「今度こそ、えいっ」


 美少女が右腕を箱に突っ込んだ。

 次の瞬間、白くてきめ細やかな肌の腕が3DLから飛び出し、俺の顔に触れた。


「うわああああああああああああ!」

 

 凄まじい勢いで叫び声が出、3DLを布団の上に放り出した。

 

 エロゲならまだしも、リアルでこんなシチュエーションに出くわしたのは初めてだ。


「マスターだ! ここからなら行けるんですね!」

「来なくていい、来なくていい!」

「待っててくださいです、マスター!」


 美少女はすごい勢いで頭を箱に突っ込んだ。


「ぷはぁ!」


 3DLから現実世界に現れ出たのは、俺の創造した理想の美少女だった。

 二次元をそのまま三次元に積分したようで、何もかもがそのまま。


 キラキラ光る碧の瞳に、サラサラと流れる金のお嬢さまヘア。

 首筋はスッと長く、ほのかな色気がある。

 そしてそこから下には、大きくてやわらかそうなメロンが二つくっついていた。


 俺は思わず、そのメロンに見入った。


 3DLから美少女の上半身が、おっぱいまで飛び出してるんだぞ。

 そりゃ賢者だって見ちまうだろ。


 ただプロの紳士である俺にも、大きな見落としがあった。


 二次元になくて、三次元にあるもの。

 それは香りだ。


 三次元の彼女は俺をクラクラさせる、甘くて涼やかな香気を放っていた。

 これなら三次元もありだな、と馬鹿みたいに考えた。


「マスター! やっと会えましたね! あ、あれ!」


 美少女がゲーム画面近くの布団に手をついて、もがいている。


「何……やってんの?」

「お尻が、ひっかかって、出られません!」


 美少女がひーんと泣き声を上げた。

 ヒクヒクする度に、おっぱいは生きているかのようにボロンボロンと揺れる。


 俺はいまだかつて、こんなにキャラのお尻の大きさを誇りに思ったこと……いや、後悔したことがあっただろうか。


 結局、彼女のぷりんぷりんのお尻を引きずりだすのに、四苦八苦する羽目になってしまった。


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