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finding me

作者: 宮里蒔灯

某ユーザー様の活動報告でのお題から、こんな短編が出来上がりました。


僕はたゆたう。


何者をも拒む深い漆黒に。全てを受け入れる透明な光に。


長い間ここにいるが、毎日変化があり、全く飽きない。


それでも自分の「使命」は忘れることはなかった。


何故なら、彼女との「約束」を胸に抱いているから。


ああ、あの金糸の髪の美しい少女はどうしているだろう。


そうだ、彼女は浜辺で別れるとき、嬉しそうに呟いたっけ。


『やっぱり、世界は広いのよ。私は知っているの』


少女は海辺の大きな白亜の屋敷にいつも一人きりだった。


多忙で薄情な両親は家に帰らず、使用人は他人行儀。


外は危ないからと、たまに庭に出るくらい。


すぐ近くに海があるのに、長い間少女は遠目でしか見たことがなかった。


『あなたに決めたわ。とても丈夫そうだし、私の願いを届けてくれそう』


たまたま側にいた僕は、無表情が常だった彼女に選ばれた。


少女はその透き通るような白い小さな手で、僕を優しく抱き締める。


そして、彼女の願いが込められた手紙を託された。


『今夜、決行するわ』


夜、人目を避けて僕らは庭から海に繋がる道へ出た。


初めての外の世界に、少女の胸が高鳴るのがわかる。


星明かりは僕らを導き、無事に海岸へ辿り着く。


『ああ……』


あまりの美しさ、神々しさに、少女の口からは感嘆のため息しか出ない。


天に無数の星が瞬き、反射する波は輝きながら絶え間なく押し寄せ、白浜は静寂を保つ。


しかし時間がない。早く戻らないと。


『お願い。必ず、届けて。そして私を……』


少女は真剣な声音で僕に「使命」を頼み、手を離した。


それから僕はずっと一人きり。


しかし僕は無力だった。


自分では誰かに助けを求めることができない。


どこかへ辿り着き、じっと待つ。


しかし何も起こらないまま、またたゆたうばかり。


今度こそ、この「手紙」を受け取ってくれる人がいるはず。


思索にふける僕の周囲が慌ただしくなってきた。


幾度となく感じた、人のいるところへ辿り着ける予兆。


僕はその身を流れに任せる。


すっかり外見は様変わりして、傷もたくさんついた。


そろそろ限界か。するとこれが最後の好機。


ああ、誰か、あの金糸の髪の美しい少女の願いを叶えてくれ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「何だこれ。瓶の中に何か入ってる。くそ、固いな……っ! ふう、開いた。手紙? 異国の言葉だな。後で長老に聞いてみるか」


燃えるような深紅の髪の少年が、海岸から拾った緑色のガラス瓶を手に、灰色の砂浜を軽やかに駆け抜ける。

青空の下、白いTシャツからのぞく小麦色の肢体が健康的だ。

何も恐れない、少年特有の好奇心と冒険心で黒い瞳を輝かせている。


───僕は少年の手の温もりに安堵し、少女の手紙に思いを馳せた。


それはきれいな文字で、短い文書で、こう書かれていた。


『私を見つけて。ここは、白い檻』


海水様!

この作品が生まれたのは、あなた様のおかげです!

ありがとうございました!

こんなところでサプライズ失礼しました!

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