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先生の秘書になりました。  作者: 佐島楓
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とんでもない一日

 女子トイレで普段着に着替え、メイクを直し、いつもの自分に戻る。

 さっきまでのわたしはなんだったのだろう、と思ってしまうくらいに、冴えない外見。


 先生に、自分の知らない自分を引き出してもらったのかな……。


 そんなことを考えていると、スマホに着信があった。

 綾乃ちゃんからだ。


『いのりちゃん、今どこですの?』

『ごめんごめん、学内にいるよ』

『カフェテリアの前でお待ちしていますわ』


 了解、とメッセージを打ち返し、速攻で一階へ。


 危ぶんでいたとおり、綾乃ちゃんはカフェテリアの入り口で男子に囲まれていた。

 可愛いうえに隙だらけなので、ナンパされやすいのだ。


「お昼、一緒に食べない?」

「ごめんなさい、約束があるんです……」

 おろおろしている綾乃ちゃん。


「押忍!」

 わざと野太い声をつくって、綾乃ちゃんの前に立つ。

「行こうぜ、かなめ!」


「な、なんだあの女?」

 男子がひるんでいる間に、綾乃ちゃんを連れて陣形突破。


「助かりました……」

 ぐったりしている綾乃ちゃん。

「あのね、もうちょっと、気をつけたほうがいいよ」

「何にですの?」

 こういう状況になっても、事態がよくわかっていないらしい綾乃ちゃん。

 どこから、どう教えればいいのやら……。


 結局、一番味の評判が悪い食堂に行き、一番ましだといわれるランチセットをもそもそと食べた。


「午後は、長谷川先生の講義ですわねっ!」

 ごはんを食べて、やる気満々になる綾乃ちゃん。

「あー……、まー……、そうだね……」

 また先生かぁ、とやる気をなくすわたし。


 あの先生、かなりのクセものだよ、といいかけて口をつぐむ。


 危ない危ない、わたしが先生のどれ……じゃなかった、秘書をやっているのは、秘密なんだった。


 綾乃ちゃんは希望に燃えて、キラキラしているのに……

 なんだか、とてももやもやした気持ちになる。


 なんだろう、この一筋縄ではいかない気分は……。


 ぐるぐると考え続けて、午後の講義が始まるころには、心身ともに疲れ果てていた。


「はい、それじゃ講義を始めます」

 壇上の先生は、涼しい顔をしている。


 さっきまでわたしに見せていた表情と、別人みたいだ。


「じゃあちょっと、ミニレポートを書いてもらいます」

 急に課題を振られて、焦るわたし。

 先生に気を取られすぎて、内容を聞いてない……!


 配られた解答用紙に、問題文が書いてあって、ほっとする。

 それにしても……むむー、先生の性格に似て、意地悪な問題だなぁ……。


 一応自分の考えをまとめて、記入を終える。

 こういうことは、わりと得意だ。


 時間を持て余してしまい、気づかれないように先生の顔を盗み見る。

 あーあ、黙って普通にしていれば、イケメンなのになぁ……。


 急に先生は、こちらに視線をよこし、バッチン! とウインクをした。

 思わず噴き出しかけるわたし。


 誰かに見られてたら、どうするの、先生!


「だ、大丈夫ですか、いのりちゃん?」

 ぷるぷる震えているわたしに、さすがに綾乃ちゃんも気づき、心配される。

「……大丈夫じゃないけど、大丈夫……」

 答えるのがやっとのわたし。


 悔しいけれど、非常に絵になるウインクでしたよ、先生!


 あー、とんでもない一日だったぁ……。


 その日の講義を全部消化し、スマホのアラームを6時にセットして、眠った。



 




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