お願い...息子のためです
40歳になると誰もが安定した生活を手にしたいと思うことであろう。彼も、きっとそうだったはず。
「お願い...息子のためです。」
でも...この世界では誰にだって、絶望を覚える日がやってくるでしょう。
安定した仕事、よく出来た家庭...そんなものがこうもモロイということ、皆さんはご存じですか?
信号が青になって、彼をよそに世界はただ無情にそのスピードを増していく。
「ーこが!...息子が病院で苦しんでる...!」
お金がこうも人を動かせるというのは、この世界のそもそもの欠陥だったのかもしれない。手術代なんて言葉はいつからこんな聞きづらいおとになったのだろう?100円?1000円。懐の大きさが定める救いの手。
こういう時に限って、この世の優しさに気付く人もいることでしょう。
お腹もすく。
「ありがとう...!頼む...!ありがとう...」
親にそんな思いをさせることなら、その息子はそもそも生まれるべきではなかったのかもしれない。避妊、中絶、そのほか諸々の壁まで乗り越えて、わざわざ親に不幸をもたらす奇跡。そんな風に子供を定義することもできたりするのであろう。
ただね、その男もどうかと...
だってもう、その翌日に娘の方が入院してるのだとか...