空に舞うは鋼鉄の鳥の群れ
1937年5月16日午前6時21分
『敵戦闘機は少ないぞ! 電子妨害は成功だ!』
スペイン王国の飛行場を飛び立った同盟軍攻撃部隊の編隊長は心の底から沸き上がった歓声をこらえきれず、そう声を上げてしまった
彼の眼前には攻撃隊の発艦準備中の空母群と護衛艦艇群が無防備に広がっており、絶好の攻撃チャンスであった
輸送船団を攻撃する部隊と別れた攻撃隊は少し遠回りで連合艦隊の哨戒線を潜り抜け、レーダーは電子戦機からの電子妨害で無効化し襲い掛かったのである
連合艦隊もむざむざとやられる訳は無く、近接信管を多用した防空陣形や直援任務で上がっていた戦闘機隊で迎撃を行ったが
『クソ! レーダーが使えないぞ! ミサイルも使用不可!』
『敵が多すぎる! 誰か援護を寄越せ!』
『VT信管が使えない! 味方を撃っちまう! さっさと退避しろ!』
と大混乱を引き起こした、更にそんな彼等を襲ったのは旧式化しつつあった爆撃機He111の編隊による一斉爆撃だった
この爆撃は空母の甲板上に並び発艦準備中だった攻撃機を瞬く間に火の海に叩き込み、空母を火達磨にしたのである
攻撃機隊が攻撃を終え帰投していく時には、ほぼすべての空母は最低でも小破半分以上が中破以上という
惨状になっており最早戦闘の続行は不可能な状態となっていたのである
艦隊はリバプールへの寄港を諦め、第2プランのアイルランドのゴールウェー港を目指したのである、しかし
「後方の輸送船団が降伏しただと!」
「空襲を受けた後、フソウのヤマグチ提督率いる機動艦隊に捕捉され護衛艦艇を全て排除され抵抗できなかったそうです...通信は電子妨害により不可能だったとの事だそうで...」
連合艦隊の司令官は参謀からの報告にそう返すと力なく椅子にもたれ掛かった
この時多聞丸率いる扶桑帝国海軍第2艦隊はジブラルタルを抜けそのまま西進し大きく迂回し連合艦隊後方で護衛に囲まれていた輸送艦隊を捕捉、航空攻撃で護衛艦のみを壊滅させた後、艦隊から分離させた高速駆逐艦を中心とした水上部隊と陸上から飛び立った大型輸送機『空山』から降下した空挺部隊による攻撃により、抵抗する手段を失った輸送船団を投降させていたのである
この輸送艦隊には膨大な量の資源と軍需物資に加え、60万にも及ぶ将兵が乗っており一部の輸送船は船団司令の投降命令を無視し、船団から離れようとしたが
『投降しろ! さもなくば撃沈する!』
「少佐、幾ら何でも戦時急造型のリバティー船で駆逐艦と航空機から逃げ出すのは無理だ!」
「クソ! こんな結果になるとは...」
急行して来た駆逐艦や飛んできた『空征』や『海征』に加え新型の大型輸送機である『空山』の対艦掃射型の警告を受け、結局降伏する事となったのである
この戦いによって傷ついた連合艦隊は何とかゴールウェー港に逃げ込めたものの、戦略的にはこれ以上無いほどの大敗であり、この日から急速にブリティッシュ連合王国は講和に向けて動き出していく事となる
そしてその報から少し経った頃扶桑帝国占領地であるサンディエゴに設置されているサンディエゴ方面軍総司令部にて発せられた1本の通信を合図に大戦最後の大戦車戦が繰り広げられる事となった...




