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合衆国の憂鬱

1936年10月5日午前10時30分

アメリゴ合衆国 首都ワシントンDC ホワイトハウス内会議室


その日合衆国の首都ワシントンDC市内にあるホワイトハウスでは久しぶりに戦略会議が開かれていた

しかしホワイトハウス周辺には多数とまではいかないがそこそこの数の戦争で家族を亡くした遺族達や人々が反戦デモを行っており、周りの一般市民たちはそれに少し関心を寄せながら見ていた

それをホワイトハウス内の二階にある会議室から一人の車いすに座った男が体ごと窓に向けて見ていた、そして溜息をつくと車いすを回転させて、テーブルを囲むように座っている男達を見渡すと


「では定例会議を始めよう...」


と話した

彼...アナベルト・ルーズベルト第32代アメリゴ合衆国大統領は初めに近くに座っていた海軍の将官服を着ていた男に促した

促された男...ウィリアム・フランク・ノックス海軍長官は立ち上がり報告を始めた


「では報告を始めさせて頂きます...現在我が海軍では先のフソウ軍のサンディエゴ軍港占領により失った太平洋艦隊の再建が完了、現在マイアミにある海軍基地にて訓練を行っております、またパナマ運河には最新のレーダー施設の建設及び防衛兵器として16インチ列車砲に多数の航空隊の配備も完了しており安全を確保しております。」


ノックスの報告にルーズベルトは満足げに頷くと


「そうかそれは良かった、しかしもう再建が終わったのかね?」


そう訊ねた

ノックスはそれに


「はい大統領閣下、旗艦には我が合衆国海軍の威信をかけ建造したユナイテッド・ステーツ級正規空母一番艦『ユナイテッド・ステーツ』、空母は同じくユナイテッド・ステーツ級の『ワスプ』『シャングリラ』の2隻に加えフォレスタル級の『フォレスタル』『サラトガ』『レンジャー』『ライト』の計6隻、戦艦は対空兵装を中心に搭載させたアイオワ級の『アイオワ』『ミュージャージー』『ミズーリ』『ウィスコンシン』の4隻、重巡洋艦15隻、対空軽巡30隻、駆逐艦60隻の計118隻を揃えており、まさに『グランドフリート(大艦隊)』と呼ぶに相応しい規模です!」


と得意げに話した

しかしそれを陸軍の軍服を着た男が鼻で笑った


「何が『グランドフリート(大艦隊)』だ、中身は徴兵と下らないマスコミのプロパガンダで志願してきたばかりの若者が中心の低練度艦隊じゃねぇか...実際に戦えるのか疑問だな。」


彼...ダグラス・マッカーサー合衆国陸軍長官はそう言うと、手にしていた資料をヒラヒラ振り


「大統領、これはFBIのフーバー長官も同じ意見なんだが正直な所なんであんなめちゃくちゃな要求をフソウに提示したのか、しかも俺とフーバー長官と当時の駐留大使のグレー大使に相談もせずに事後承諾で勝手に決めやがって...話を戻すが正直な所陸軍としてはサンディエゴを取り戻せるのは最低2年は掛かるという意見であるという事を言っておく、海軍も協力してくれるならそれより少し早くなるが所詮2カ月分早くなるだけだ。」


と告げた

ノックスは顔を真っ赤にして、ルーズベルトも怒りの表情を浮かべると


「...フーバー君、同じ意見なのかね?」


と視線を彼からみて右斜めに座って目を閉じて腕を組んでいる男に尋ねた

それにフーバー...ジャック・エドガー・フーバー合衆国連邦捜査局長官は目を開け


「ええ、マッカーサー長官と同じ意見です...全く大統領、あなたも困ったことをしてくれたもんです。」


と溜息を吐くと続けて


「大統領、私はあなたが大統領に就任した際に伝えたはずです、我がステイツにとってフソウは宿敵でもありますが裏ではかなり良い関係を築けている...と 具体的には国内の犯罪者集団に関しての情報提供や高価な難病治療の為の医薬品の販売に加え諜報員や調査員の教育の支援、ダミー会社を経由しての国内に多数存在する孤児院への無償援助や資金提供等の支援...フソウとの開戦後我がFBIはかなり苦しい状態に陥ってしまっています、今はまだフソウの諜報機関が交戦中は何もしないとの確約をしてくれているので何とかなっていますが...書類で報告したはずですが?」


とルーズベルトに呆れたような表情を浮かべながら返した

ルーズベルトはそれに驚いたような表情を浮かべると


「そんな報告は受けていないぞ!」


と話した

フーバーは頭を抱えると


「...急ぎ政府や各省庁のスパイ狩りを行います、恐らくどこかに過激派思想か外国の諜報機関の手の物がいるかもしれません...とにかく大統領、絶対に国内のフソウ系組織に手を出さないでください、彼等は我々が手を出さない限りは犯罪者や海外からのスパイの情報を出してくれる集団ですので、まあ監視はおいているので手を出して来たら潰すのでご安心を。」


と報告した

マッカーサーは頷くと


「そういう事だ、確か軍にもフソウ系組織の孤児院出身者がかなりの数がいた筈だ、下手に手を出すとストライキか反乱がおこるだろうな...それはそうと大統領、あんた最近東欧系のニューヨークタイムズの女性と会っているそうだな、会うのやめた方がいいぞ。」


と告げた

ルーズベルトは脳内にここ数年で私的に知り合った東欧系の美女を脳内に浮かべると


「何故だね? 彼女は記者の筈だが?」


と話した

マッカーサーはそれにタバコの火を付けながら


「そいつ天朝帝国の工作員だ、FBIと陸軍の両方で確認も取れてる...何でもフソウの防諜機関が本州の山脈を根城にしていたスパイ組織を潰した時に出て来た情報らしい...こういう事さ、フソウからしてみれば自分達が取り逃したスパイを捕まえてくれるからギブ&テイクらしい、後であんたにも紹介するよ、対応を間違えなければ良い取引相手だ。」


と話した

そしてルーズベルトは暫くの間扶桑から受けた情報、更には欧州に派遣している部隊の損害状況などの報告を受けた、そして報告が終わるとCIA...シドー・W・ソワーズ中央情報局長官が報告を始めた


「えー、それでは報告を始めます...現在我がCIAではフソウ海軍の新たに計画した建造プランと建造中の艦船についての情報を得る事に成功、他には同盟諸国が計画中の作戦通称『パンツァ―ファウスト』作戦に関しての情報を一部入手する事にも成功しております。」


出席者達は配られた資料に目を通した


「現在フソウ海軍では主力艦の建造を行わず護衛空母や巡洋艦や駆逐艦に輸送艦及び輸送船、他には潜水艦に小型艦艇の大量建造を行おうとしている模様です、この情報は現地の諜報員が海軍の建造計画担当の大佐から得た情報なので確証は高いでしょう...しかし問題は『パンツァ―ファウスト』の方です、かなり防諜に力を入れているのか現状入手出来た情報によると、かなり高い確率でヨーロッパ又はアフリカでの同盟陣営の総力を上げた大規模攻勢計画があるとの事ですが、具体的な日時や場所に参加兵力数などは判明しておりません。」


とソワーズは報告した

ルーズベルトは資料に一通り目を通すと


「質問なのだがフソウ海軍は大規模な戦略プランの変更でも行ったのかね? 私は軍事に関しては素人なのだが戦争中に主力艦の建造をしないとは考えにくいのだが?」


としゃべった

それにノックスが答えた


「これは予想ですが、例のフソウ海軍が建造したと思われる海上移動要塞が関係しているのではないでしょうか? 海上要塞ではありますが実態は複数の旧型戦艦を改装し合体分解を繰り返すことで構成されてると聞いております、それゆえに主力艦は十分にそろえたと判断し準主力艦と補助艦艇の拡充に動いたのではないでしょうか?」


ルーズベルトはそれを聞くと


「そうか、ではこちらは主力艦の建造を拡大する事にしよう...議会には話を通しておく、報告は以上かね?...では解散、各自の仕事に戻りたまえ...ああそうだ、マッカーサー君とフーバー君は残り給え。」


と二人を残した

そして二人以外が出て行ったのを確認すると


「君達に聞きたいのだが...君達は我が国に関する機密は喋っていないのかな?」


と尋ねた

二人は顔を見合わせると


「いや、幾ら何でも喋っていない、負けたらこっちもやばいからな。」


「私もです、ご安心を。」


と言った

ルーズベルトは暫くの間じっと彼等をにらみつけていたが、息を吐くと


「...わかった、君達を信じる事にしよう...」


と話し、車いすを外の光景が見える窓に向けた

外では相変わらずデモが行われている

そしてそれを暫く眺めると、話し始めた


「...我がステイツは独立以来フソウに何度も苦しめられてきた、何度も何度もだ...30年前に当時のフソウの総理大臣達を買収してタヒチ島を自国領土に編入した時はまさにお祭り騒ぎだった、しかしその行動によってフソウは我が国対して輸出の大幅制限に関税の大規模な値上げを行った...私は不況に苦しむ国民達の為に戦争を起こしたはずだ、国務長官のローデル・ハルと周りにいる軍人達や学者達の皆から『フソウのサル共なんぞ神の加護を受けた我がステイツの兵士達にかかれば鎧袖一触です!』『有色人種は我が白色人種に比べて身体能力が劣っている。』と聞かされた、だから戦争を起こす事を決めたんだ...それが今やこんな有様だ。」


そんな話にマッカーサーは


「いや、なんでそんなホラ話を真面目に信じたんだ大統領? フソウの軍って大昔から可笑しい位に高い練度を誇っている軍勢だぞ? 具体的に言えば合衆国軍の精鋭のベテラン兵士4人でやっとフソウの一般部隊の兵士と打ち合えるんだぞ? それと身体能力に関してだが確かに有色人種のフソウ人は俺達白人に比べて体格は劣っているかもしれんが夜目が利くから対して変わらんぞ、それに体格も良い物食えばでかく出来るしな。」


と呆れながら答え、フーバーも


「そうですよ大統領、それとあの場では話していませんでしたが国務長官は天朝共産党(史実の中国共産党、モスクワ連邦と同じ共産主義を掲げているがモスクワ連邦からは『悪しき共産主義』として宿敵宣言しており過激派共産主義と呼ばれている、因みにモスクワ連邦は一部資本主義を取り込んだ穏健派共産主義を掲げている)のスパイである可能性大です、それに大統領にそんな事を吹き込んだ者達も前大統領がコネと賄賂でホワイトハウスに招き入れたバカ共ですよ...」


と溜息を吐きながら答えた

合衆国は中身が問題だらけの状態に悩まされることになる

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