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大騒ぎ

1936年9月10日

地中海 ローマ連邦王国領パレルモ軍港 扶桑帝国海軍欧州派遣艦隊『第二航空艦隊(第6機動艦隊から名称変更)』母港


扶桑帝国軍欧州派遣部隊が欧州に到着してから二週間、扶桑帝国軍は欧州の戦況を変えつつあった

海軍は正規空母六隻(飛龍型二隻・江戸型四隻)・水上機母艦三隻(秋津洲改型)・超弩級戦艦一隻(大和型)・重巡二隻(利根型航空巡洋艦)・軽巡八隻(阿賀野型)・駆逐艦三十隻(秋月改型八隻・松型二十二隻)・輸送艦十隻・油送艦十隻の計六十七隻

航空機は飛龍型二隻の128機(64機づつ)と江戸型四隻の124機(31機づつ)の艦上戦闘機120機に艦上攻撃機110機に艦上偵察機15機の252機に加え、水上機母艦三隻の大型飛行艇12機に超重戦艦の水上観測機4機に重巡二隻の水上偵察機2機と水上戦闘機6機の計10機に軽巡八隻の水上偵察機8機の全て合わせて28機の286機を用意しており

地中海で激突していた両陣営の制海権争いを一気に同盟陣営側に傾けた

それまでは同盟陣営よりも主力艦を投入していた連合陣営側が優位に進めていたが、新造でありながら名前を受け継ぐ前の旧『飛龍』に乗っていた歴戦の乗務員を乗せた空母を惜しげもなく投入した扶桑帝国艦隊の攻撃により、僅か二週間の間で連合陣営は主力艦だけでも戦艦一隻に重巡三隻を失っており活動は停滞し始めていた

陸軍は機甲戦力として三六式主力戦車『チリ』と三六式支援戦車『オ二車』を投入し、装甲戦力として

既に南部戦線の前線近くに展開し、攻勢に関しては世界一だが防衛は弱いのゲルマン軍が攻勢を行い持ち前の機動力と火力で前線を押し上げると、その後ろから付いて来た機械化されて重装備の扶桑軍が他の同盟陣営の軍と協力して、大量の物資を使い塹壕や土嚢や地形を活用して塹壕戦や防御拠点に加え対空拠点や野戦飛行場に砲撃陣地等を建設し防衛する戦術を使い連合諸国から『防御は得意だが攻勢はダメな穴熊』同盟陣営から『攻勢は不得意だが防衛に徹底されたら突破は不可能』と評価される能力を最大限利用し膠着していた南部戦線をゲルマン軍を支援してジリジリと押し上げていった

また陸軍はすでに欧州に派遣する戦力の増強を決定しており、その中には通常の部隊の他に航空部隊や空挺部隊もあり、派遣される航空部隊には最新の高高度迎撃戦闘機『震電』と『震電改』の2機種を配備する事も決定されている


そんなこんなで日々宣戦を押し上げるのに忙しい同盟陣営軍であるが、この日から2日ばかりは戦闘は最小限以外は行わない事が決まっていた

理由としては疲弊した戦力の補充や休養、無理に押し上げた戦線の整理、そしてつい先日誕生した扶桑帝国皇帝第123代皇帝神楽の子『輝夜かぐや』の誕生を祝う為である

既に後方にいる部隊はともかく最前線の部隊にも臨時に支給された嗜好品の類が届いており、この日ばかりはいつも食事として支給される栄養はあるがどこか味気ない戦闘糧食ではなく、交代で故郷から送られてきたそこそこ味が良い扶桑酒(日本酒)と占領しているガリア地域で接収(現地の人々から1リットルごとに生活必需品詰め合わせ10キロで交換した物)したワインを飲み後方支援師団が死ぬ気で作り上げた扶桑各地の郷土料理の数々を食べていた

無論他の同盟国も同じように英気を養っている


ただ連合軍もそんな同盟軍の様子を見ているだけでは無かった

彼等も同盟軍が放棄した地点を再占領すると、即座に攻勢を行ったのである

しかし彼等を迎えたのは急造陣地に隠れた歩兵や戦車が持つ機関銃や対戦車砲の射撃ではなく、前線から離れたところに存在する半地下要塞と化している陣地から放たれた重砲を始めとした砲撃兵器から放たれる壁の如き榴弾の雨とロケット砲から放たれるロケット弾や航空隊の爆撃だった

なんせ連合軍司令部は少しづつ押し込まれている現状に焦り、前線部隊が再占領を行い精神的に疲弊している事に目を瞑りろくに計画を立ててないまま攻勢を行ったのである

この司令部の焦りの代償は前線の部隊が払う事となった

史実の第一次大戦を思わせるような砲撃と航空攻撃の雨を食らった前線の部隊は、一番被害が少ない師団でも歩兵戦力の一割の減少に装甲戦力の稼働率が三割を切った

逆に一番被害の大きかった師団は攻勢をかけており移動中だった際にモスクワ連邦軍のカチューシャ自走ロケット砲5両やゲルマン連邦軍のネーベルヴェルファーロケット砲20門から放たれたロケット弾の雨がまともに何度も当たったことから歩兵戦力の半分が死傷、装甲戦力は稼働する物は無いほどだった

この無謀な攻勢にはさすがに前線の部隊と一部将官からも不満が爆発し

『何がエリートだこの野郎! ジャガイモ野郎とクマ共とジャップ共を殺すよりこっちを殺す気かボケェ!』

『後方じゃなくて前線に偵察に来やがれ参謀共! ぶっ殺すぞ!』

『攻勢したけりゃもっと航空機と重砲持って来い! 持ってくるまでは攻勢しねぇからな! ついでにレーションももっとマシなのに変えろ! なんでクラッカー噛んだら歯が欠けるんだ!』

と一部関係ないのもあったが暫くの間攻勢を行わずに戦力の補充を行う事になった


そんなこんなで軍港のあちこちで、所属している国に関係なく騒いでお祭り騒ぎをしている兵士達を、4階建ての司令本部の一室から窓越しに三人の同盟陣営主要国の指揮官達が酒を片手に見ていた

まず口を開いたのは左胸に大将の階級章を付けたカーキ色の軍服を着た男だった


「まるで戦争が終わったかの如く騒いでいるな、同志マンシュタインに同志ヤマシタもそう思わないか?」


男...『連邦の至宝』や『連邦機甲師団の父』と呼ばれるミハイル・トゥハチェフスキー、旧ゲルマン連邦帝国救援軍...現モスクワ連邦南西戦線派遣赤軍司令官兼モスクワ連邦軍大将は面白そうにそう話した、すると


「まあたまにはいいでは無いですか、それと友好国とはいえ一応国家思想違うんで同志はやめていただきたい、マンシュタインと呼び捨てで結構ですよ。」


そう答えたのは苦笑を浮かべているグレー色の将官服に大将の階級章を付けたエーリッヒ・フォン・マンシュタイン、南部戦線司令官兼ゲルマン連邦帝国国防軍大将だった

そしてそれに続くように


「私としてはどちらでも構いません、思想という物は人によって様々ですからな、それが過激でなければなんでも良いでしょう...それと私も呼び捨てで大丈夫です。」


と濃い焦げ茶色の将官服に大将の階級章を付けた山下奉天、扶桑帝国欧州派遣軍陸軍部隊総司令官兼扶桑帝国陸軍大将が答えた


そしてトゥハチェフスキーは


「わかりました、では始めましょうか...」


と少し笑みを浮かべると部屋に置いてあった地図をテーブルに広げた

そして地図の隣に瓶入りのワインを置いて、地図のヨーロッパの部分を指差して会議を始めた


「現在同盟軍は大まかに北部戦線と中央戦線では膠着状態、しかし南部戦線においては少しずつではありますが確実に戦線を押し上げています...これからどうするか、意見があれば発言していただきたい。」


そのトゥハチェフスキーの言葉に山下は


「私としては今の状態のまま確実に押していくべきだと考えている、下手に攻勢を行って大損害が出たら守り切れなくなる。」


と意見を出した

それにマンシュタインは


「確かにその意見は分かる、しかし逆にチャンスでもある、現在戦線が動いているのは此処(南部)だけだ、つまりここを突破してしまえば他の戦線も我が方優位に動いていくだろう。」


と別の意見を出した

そしてそれには山下も頷くと


「確かに...しかしどうやって突破するつもりで? 現状押し上げる事は出来ても突破する事は不可能に近い、連合も我々の戦術に対応してきていくつもの防御線を構築していますが。」


と話した

そして三人は暫くあーでもないこうでもないと話していたが、不意に山下が


「待てよ...突破できないなら、しないようにすればいいのか?」


と呟いた

トゥハチェフスキーとマンシュタインは顔を見合わせると


「そうか、そういえばそうですな...無理に突破するよりも後方に上陸して包囲してしまえばいい。」


「こちらとしては願ってもない事ですが、制海権の確保と上陸地点をどこにするかが悩むところです。」


と話した

山下は頷くと


「制海権に関しては同盟陣営の地中海にいる艦隊を使えば確保できます、現状我が扶桑帝国海軍の派遣艦隊が絶賛撃滅中ですからね...問題は上陸地点ですが、いかがでしょう? いっそのことアフリカの方でも上陸戦を行うというのは、そうすれば出撃した艦隊の情報を探ろうとする連合の司令部を混乱させることが出来るかもしれません。」


と話した

そしてこの計画はそれぞれの祖国の司令本部や他の同盟陣営の司令本部などに伝わり、手直しされたうえで実行に移されることになった

そしてこの上陸作戦は『パンツァーファウスト(鉄拳)』と呼ばれることとなった

因みに由来は

『その鉄拳をもって戦争を絶対優位に進める為』である



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兵器紹介


『火竜改』

火竜の燃料系とエンジンの改良と胴体に外付けの増槽を取り付けて航続距離を2500kmにした物

『風竜改』

火竜と同じ改良を施して航続距離を2300kmにした物

暁雲ぎょううん

史実よりも航続距離が7000kmまで短くなっているが短期間で開発に成功した物、先行量産された少数の配備が間に合った

全長:15m

全幅:19m

全備重量:14,000kg

エンジン:へ号エンジン 2300馬力 ×2

最大速度:704 km/H

武装:12.7ミリ機銃2丁 200発×2

   後部防護用12.7ミリ機銃1丁 150発

航続距離:7,000km

乗員:3名


『震電』

史実での震電に通信機の搭載や機体の改良に加えて武装を30ミリ機関砲4門から3門に変更し、全体的な性能がほんの僅か下がってしまったが通信性と量産性と整備性を向上させたもの、既に高性能型の『震電改』が完成しているが数の面や整備性の観点から主力迎撃戦闘機になることが決定されている


『震電改』

史実では完成間近に終戦してしまった『震電』のエンジンをジェットエンジンに換装して完成させたもの

性能は史実の震電よりも性能がハイスペックとなり武装も30ミリ機関砲3門から40ミリ機関砲2門に変更し弾薬数を増加させたが、その分生産性と整備性が悪くなってしまい現状では高性能の通信機と航空機用小型電探を搭載し指揮官専用機兼対重爆迎撃機となっている


『大和型超弩級戦艦』

船体まで完成しており建造途中だった大和型戦艦を改造して6月1日に完成した最新鋭にしてまさしく世界最強戦艦

この艦の一番の特徴として主砲に51cm三連装砲を2基6門を搭載されている事があげられる

それ以外にも副砲として国内外から『世界最強の16インチ砲』と呼ばれる長門型戦艦や甲型海上要塞に搭載されている41センチ連装砲を発展改良した41センチ三連装砲を前部の51センチ三連装砲の後ろに1基、最上型に搭載されていた15.5センチ三連装砲を後部の51センチ三連装砲の後ろに配置しておりどの艦種に対しても対応可能な武装となった

また将来を見込んでかなり弾道ミサイルも搭載可能な程、余裕のある構造になっている

現在一番艦である『大和』は既に浸水し艤装も完了、陸地が近く戦艦同士の殴り合いが起こる欧州の地中海へ対戦艦決戦戦力として派遣されている

姉妹艦としては『武蔵』『信濃』『紀伊』がおり、そのうち『武蔵』は既に浸水しており艤装作業中である、『信濃』『紀伊』の両艦は航空戦艦として浸水間近となっている

因みにこの世界では直哉が秘密兵器として秘匿建造するのを嫌って大々的に建造を行っており、史実での秘密兵器では無く、誰もが知る最大にして最強の決戦兵器として建造されている...その為性能は秘匿されてはいるが、それ以外は色々と隠さないでいる為、史実より建造期間が飛躍的に向上している

直哉としては表向きは


「わざわざ隠すよりは公開して連合諸国の国力を時代遅れの戦艦の建造に費やしてやる為。」


と話しているが

実際は


「史実の様な最後を遂げさせない為」


と神楽には話している


基準排水量:64,000t

全長:285m

全幅:38.9m

速度 27ノット

機関:ト号改型重油燃焼缶八基 七万馬力四軸推進

航続距離:16ノットで7,200海里

武装:45口径51センチ三連装2基6門

   45口径41センチ三連装砲1基3門

   15.5センチ三連装砲1基3門

   65口径12.7センチ連装速射砲8基16門

   ボ式40ミリ連装機関砲10基20門

   ブ式12.7ミリ四連装機銃16基64丁 

   直上防護用ブ式12.7ミリ四連装旋回型機銃2基8丁


『秋津洲改型水上機母艦』

史実の秋津洲型から武装を取っ払うのと拡大強化させ、二式大艇3機に補給と簡易整備を行えるようにしたもの

基準排水量:9,000t

全長:170m

水線長:130.000m

垂線間長:120.700m

水線幅:15.800m

深さ:10m

吃水:5.400m

機関:チ号ディーゼルエンジン

航続距離:14ノットで8,000海里

乗員:350名

武装:ボ式連装機関砲2基4門 

   和式爆雷(扶桑版ヘッジホッグ)120個

搭載機:二式大艇3機+予備機1機

  

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