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シャム地方攻防戦その四

「終わったか....」


「はい大尉...」


天朝軍は撤退したのを確認した佐藤は手に持っていた三六式自動小銃を降ろした

近くにいた栗林も同じく銃を置いた

戦闘は中隊長である佐藤と副官である栗林も撃たれた兵士達が落とした小銃を手に戦う程激しかった

防御陣地は銃撃跡が多くそれ以外には目立った損傷こそ無いが、その分ライフル弾の弾幕に倒れた兵士は多かった

佐藤は周りを見渡し暫くは寝れそうにないなと心の中で呟くと、陣地の外を見た

外には扶桑軍からの攻撃によって倒れた天朝軍の突撃歩兵...徴兵されて銃を持たされただけの農民達がいた

扶桑側の兵士達は休憩もそこそこにそれぞれ、倒した指揮官と督戦部隊を捕縛しに行く部隊とあちこちで呻き声を挙げている兵士達を治療する為に捕縛しにいく部隊と死亡したり砲撃でバラバラになった兵士達の遺体を回収する部隊に分かれて行動を開始した


扶桑側からしてみれば治療してやる事自体気乗りしないのだが、戦闘が終わった後は敵にも治療を施す事が条約で決まっているので仕方無くである

治療を受ける天朝側の農民達もその事が分かっているのか痛みに呻き声を挙げながらもおとなしくしていた

ただ指揮官や督戦部隊は喚いていた為、適当に治療を施した後収容所に送られた後、脱走行為を行った瞬間に銃殺された

それに対して治療を受けおとなしくシャム地方各地で捕虜となった農民達には、政府の指示を受けた軍から『このまま戦争が終わるまで捕虜として自給自足しながら収容所で暮らすか、密かに故郷に帰り家族を連れて扶桑に亡命するか』の選択肢が与えられて、農村から徴兵されてきた大半の農民達は重税を課すばかりの天朝帝国より税の軽い扶桑帝国で新たにやり直す事を決め、食料と少しの貨幣と亡命する為に必要な紹介状を持たされて解放された


扶桑の考えは『まだまだ食料とか余ってるけど流石に無駄飯食わせるのもあれだしかわいそうだから解放しよう、もしこっちに来てくれるなら天朝の食料生産能力に打撃を与えられるし、まだまだ開拓できる土地余ってるし大丈夫だろ』という考えだった

ただこの扶桑の考えは最善の形で裏切られるのである

なんと亡命してきた農民達は家族を連れて来ただけではなく村ごと亡命してくる事が続出したのである

彼等曰く

「正直な所、天朝には愛想が尽きていた。」

「只でさえ税が重すぎるの癖に飢饉とか戦争が起こると国庫の中身が減るからって、何度も臨時税取られたら生活できない!」

「前皇帝はまあまだマシだったが、今代の皇帝はデブで禿で最悪な皇帝だから嫌だ!」

「機会があれば亡命したいと思っていた。」

「え、どうやってここまで来れたのかって? 少人数で分散して来た、しかも正規軍の連中指揮下の徴兵したばかりの連中が脱走しないようにするので精一杯だから楽勝。」

等という話だった

扶桑は、天朝各地から開戦から2カ月近くで来た15万人近い数の亡命者達の扱いに頭を抱える事になった

その結果、東南アジア各地やウルル大陸に植民都市とその都市に食料を供給する農村等を民間企業や軍の工兵隊まで投入し建設する事で対処する事になった


天朝政府がこの農民達の動きに気付いたのは開戦から6カ月経った頃だった

天朝政府は直ちに自国の亡命者達を引き渡す様に扶桑に要求したが、扶桑はそれを鼻で笑うと

『亡命されるのが悪い、それと戦争中なので聞く必要も無い。』

と返した

天朝政府はそれに激怒すると軍を展開させて亡命者狩りを行ったが、元々の軍の士気の低さと分散して行動する亡命者達の動きについてこれずに大半を逃してしまった


佐藤は後にその亡命者達の多さに頭を抱えることになる事をまだ知らなかった

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