シャム地方攻防戦その一
1936年4月15日
シャム地方天朝国境都市モンラ付近最前線防御要塞
シャム地方の天朝との国境線地点にあるモンラ近郊の山岳にある防御要塞と複数の防御陣地には、扶桑帝国陸軍シャム方面軍第31師団が駐屯している、そして現在シャムの内陸に建設された工場群を狙い侵攻してきた天朝軍との激しい戦闘が行われていた...
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「また天朝共が来たぞ!」
「総員配置に付け!」
旧式化してしまい改築中の要塞を侵攻から守るために作られた急造の防御陣地の一つである『第一防御陣地』に駐屯していた、第31師団所属の第一中隊三百名は、侵攻してきた天朝軍七千からの攻撃を受けようとしていた
中隊を率いる佐藤大尉は偵察に出ていた兵士からの警告を聞くと直ぐに仮眠を取るために寝ていたハンモックから飛び出すと叫びながら指揮所に向かった
佐藤は指揮所に入ると直ぐに
「通信士! 要塞に支援要請をしろ! 戦車と砲撃支援を要請するんだ!」
と通信士に伝えると
近くで待機していた伝令兵達に
「第一小隊は中央、第二小隊は左翼、第四小隊は右翼、欠員が出ている第三小隊は予備戦力として待機する様に伝えろ、急げ!」
と命令した
伝令兵達は敬礼すると直ぐに指揮所を走って出て行った
佐藤はそれを見届けると
「状況はどうだ?」
と男が好きそうなメリハリのついた女体を軍服で包み、テーブルに広げられていた地図を睨み付けるように見ていた副長である栗林中尉に尋ねた
栗林は敬礼をする暇もないと言わんばかりに
「偵察からの報告によれば、天朝軍七千が我が中隊が守備する防御陣地に進軍中との事です、歩兵火器は旧式の単発装填式のボルトアクションライフルばかりですが、最悪なのは小型の榴弾砲を引き連れているとの事です...それと未確認ですが戦車らしき物もいたとの事です。」
と捲し立てた
佐藤は栗林の言葉に苦い顔になると
「むう、動きの遅い榴弾砲なら要塞に設置されている要塞砲で何とかなるが戦車となると厳しいな...連中の戦車は動きの早い軽戦車ばかりだろうし.......」
と考え込むと
「通信士、機甲支援は後どのくらいで到着する?」
と通信士に尋ねた
通信士は無線で問い合わせると
「約7分後に5両の一個小隊が到着予定です、具体的には『三五式戦車チハ』4両に『三六式重戦車オイ車』が1両だそうです...まあオイ車は時速15キロなので時速40キロのチハが先に到着します、因みにオイ車はチハの約30分後に到着予定とのこと。」
と佐藤に報告した
因みに『三五式中戦車チハ』とは去年の春頃から量産が始まる予定だった物を、直哉が大規模な変更を施して生まれた扶桑帝国陸海軍の共通主力戦車である
設計思想として
『防御と走破性重視で火力はそれなり』
となっており、具体的な性能は
三五式中戦車チハ
全長 8.5メートル
全幅 3メートル
重量 34トン
武装 主砲 長砲身75ミリ対戦車砲 弾数70発
副武装 主砲同軸型三六式軽機関銃1丁
車体搭載型三六式軽機関銃2丁 弾数3000発(3丁合わせて)
前部装甲 80ミリ
側面装甲 60ミリ
後部装甲 50ミリ
上部装甲 30ミリ
時速 40キロ
行動可能距離 200キロ
乗員数5人
エンジン 飯島重工製400馬力ガソリンエンジン
となっている
史実のチハよりも3倍程高くなっているが、量産が進めば安くなるので問題は無い
といっても値段以外に問題があり、現場からは
『機動性は良いがエンジンが不機嫌な事が少々多い。』
『ガソリンを使っているから引火しそうで恐い。』
といった声があがっている為、研究所では改修計画が出ている
まあそんな正に『魔改造チハ』と言わんばかりのこのチハは、本来なら北海道に配備されている扶桑帝国陸軍の第一機甲師団に優先配備されるのだが、大戦に扶桑帝国が参加したのを理由に、天朝帝国軍とヒンドゥスターン連邦経由で侵攻してくるであろう連合国軍に対処する為、ここシャムに400両が集中配備されている
そんなこんなで通信士の報告を聞いた佐藤は
「そうか、なるべく急がせるように伝えるように、それと各小隊から偵察を出して情報を集めさせろ。」
そういうと佐藤は地図を睨み付けた
まもなく戦闘が始まる




