ロ号作戦その四
「.......中佐殿、なんか拍子抜けです。」
「.......変に死人出るよりマシだろう大尉?」
ロ号作戦最大目標であるサンディエゴ軍港に停泊している合衆国太平洋艦隊の拿捕を行うべく、陸軍第32自動車化大隊が軍港を襲撃したのだが.......
「しかしまさか全艦放棄して撤退しているとは、しかも半分は逃げるのに失敗するとは.......」
大隊長である中佐の補佐である大尉が言うとおり、合衆国艦隊の乗員は半数程制圧していない地区を通って撤退していた
それに中佐は
「だが罠が仕掛けられている可能性がある、投降してきた将兵達に確認しておけ...それと司令部にこの状況を報告して応援を要請するように。」
と大尉に命令し
「しかし連中凄まじいな、さすが近衛軍の精鋭だ。」
と目の前の光景を見ながら現実逃避気味に呟いた、だがそれに大尉は
「いやそんな強さではないかと....敵さん全員の肩を狙撃して一人も殺さずに捕虜にするなんて事出来ないであります。」
と同じく見ながら現実に引き戻した
二人の目の前には
「フソウコワイフソウコワイフソウコワイ.......」
「何がイエローモンキーだよ畜生! 悪魔じゃないか!」
「こんな連中がいるフソウに何で喧嘩売ったんだルーズベルト!」
『五月蝿いぞ捕虜共、もう一度戦いたいのか?』
「「「すいませんごめんなさい!」」」
と騒ぐ捕虜達を近衛軍から派遣されてきた兵士達が英語で黙らせる光景と
「ほう...お前さん扶桑の支援で作られた孤児院出身なのか。」
「ああだから差別意識はないよ、フソウには御世話になったからね...仕事が見つからなかったから軍に入ったけどまさか扶桑に宣戦布告するとは、あのバカ大統領は何考えてるんだ!」
「確かにな、フソウに喧嘩売るなんてバカげた話だ.....まあ軍に入った後も孤児院出身の連中は苛めが酷かったから助かったよ、このままフソウが勝利して戦争が終わるまでのんびりするさ。」
「そういう事だから艦艇に付けたトラップ解除してやるよ。」
「おおありがとうな! よし! お前達の収容先は本州にするよう上官に頼んでおくよ。」
と、捕虜達と近衛兵達が親しげに会話する光景が広がっていた
中佐と大尉は目の前の光景から目を離し
「それで艦艇の鹵獲状況はどうだね、大尉?」
と中佐が尋ねた
大尉は持っていた書類をパラパラとめくり
「えー、小型の駆逐艦十隻に軽巡二隻が哨戒に出ており北方に逃れたようですが、それ以外の戦艦七隻・正規空母四隻・軽空母二隻・重巡洋艦八隻・軽巡洋艦五隻・駆逐艦三十隻の計五六隻の鹵獲に成功.......まあ全ての武装は壊されている事に加えスクリューまで全て使えないので移動も困難、更に湾口には機雷と選り取りみどりでありますな。」
と報告した
中佐は
「そうか大漁だな、では直せるものだけ直して乗員は残留希望者以外帰してやれ.......糧食の無駄だ。」
と命令した
大尉は敬礼で答えると部下に指示を出すため、中佐から離れた
中佐は離れるのを見届けると
「作戦はなんとか成功した、しかし合衆国の生産能力は凄まじい事この上ない、来年にはこの作戦で鹵獲した艦隊を遥かに上回る艦艇を出してくる.......この下らない戦争はいつまで続くのだろうか....」
対合衆国戦争は扶桑帝国の優勢から始まった




