開戦
1936年2月7日金曜日午後11時50分
御所 宴会室兼総指令室
実は御所には宴会等を行える宴会室が設置されている、そこは完全防音設備になっている為部屋の外からは中の音が聞こえないので、皇居で働く職員達は
『宴会室ではベロベロに酔った人が卑猥な行為ばっかりするから可能な限り開けない。』
と言った暗黙のルールが罷り通っている
しかし実際の所は...
「こんな戦争指揮所になってるとは思わないだろうね。」
掛けられている掛け軸の後ろにある隠しボタンを押すと隠し通路が現れ、その通路を進むと設計図には書かれていない無線等を始めとする指揮装備や世界地図や戦略地図といった物が並ぶ広々とした映画等に出てきそうな隠し部屋に通じていた
そしてその隠し部屋で直哉はそう呟いた
その呟きにその部屋にいた石原がニヤリと笑い
「すごいだろ、この戦争指揮所では世界各地に根を張っている諜報組織や現地の協力組織から得られる情報や外務省や陸軍省に海軍省といった省庁から入ってくる情報が集約されている、どんな他国の諜報組織でも此処は見つけ出せない、此処の存在を知るのは各軍のトップや代々の皇帝と近衛武官に此処で働く連中だけさ。」
と自慢げに話した
直哉は部屋にいる石原と島郷に話し込んでいると
「サンディエゴ軍港監視中の潜水艦隊より報告! 駐合衆国大使を乗せた輸送船が護衛の駆逐艦二隻を引き連れて出港したのを確認! それと同時に暗号を受信!
『合衆国は最後通牒を突き付けて来た、戦争は回避不可能。』
との事です!」
と無線に付いていた通信士の一人が報告した
三人は会話を止めた、そして島郷が
「やはり戦争已む無しか...ロ号作戦参加艦隊と上陸部隊に
『ニイタカヤマ二クモハナシ(訳 新高山に雲は無しとは、海軍暗号で作戦開始用意という意味)』と送れ!」
と命令を出した
指揮所にいる通信士達や参謀達を始めとした職員達はその命令を受けると慌ただしく成り始めた
そして石原も
「シャム地方の軍司令部にも『敵来襲注意、全隊に警報を出せ。』と連絡しろ、平文で良い。」
と命令を出した
直哉は世界地図や地域の地図が広げられているテーブルまで行くと、テーブルの周りにいる参謀達に
「北方を哨戒中の艦艇から敵艦発見の報は入っていないか?」
と尋ねた
参謀達の一人が直哉の問いに
「いえ入っておりません、ただ昨日哨戒中の北方艦隊所属の哨戒潜水艦『ハ103』より国籍不明の民間の輸送船団発見の報が上がっております、軍用艦船が偽装している恐れがある為、最悪の事態に備え太平洋側の全防衛飛行隊を交代で上げておきます。」
と答えた
直哉はそれに
「よろしい、それとその船団は捕捉できていないのか?」
と尋ねた
参謀は
「いえその潜水艦も遠くから見ただけだそうです、しかもその艦隊はかなりの速度だった為追い付けなかったと報告が上がっております...かなり馬力のあるエンジンを搭載していると思われます。」
と答えた
直哉は参謀からの報告を聞くと少し考えて、通信士に
「すまんが東京郊外の飛行場にいる第三飛行試験隊に連絡を入れてくれ、内容は『試験中の迎撃機をいつでも出せる様にしとけ』だ。、同時に太平洋側の各基地から哨戒機を上げてその艦隊を探させるんだ...あのクソッタレの大統領なら民間船舶に偽装して航空攻撃をしかねないからね。」
と命令した
その直哉の言葉を聞いた石原が
「あったのか直哉殿?」
と尋ねた
直哉は頷きながら
「ええありましたよ、国内の厭戦気分を吹き飛ばすために陸上機を無理矢理空母に乗っけて東京を爆撃した物ですがね。」
と答えた
そして時計の針は12時丁度になり
「外務省から報告...
『合衆国と連合諸国は扶桑帝国に宣戦布告、全世界に大々的に宣伝している模様』との事です。」
と通信士が報告した
石原と島郷を始めとした指揮所にいる全員は一斉に直哉を見た
直哉は見てくる全員の顔を見渡すと
「そうか...では近衛武官の名において命じる...作戦開始!『ニイタカヤマノボレヒトフタマルマル!』」
と号令を発した
扶桑はその力を解き放った
後にこの大戦で扶桑帝国は『大戦は扶桑が参戦してから世界大戦となった』と世界各国で言われる程、その存在を示した




