『松事件』その二
そして事件が起こった
始めに合衆国軍機の異変に気が付いたのは早川だった
「ん? 大丈夫かあれ?」
挑発行為を繰り返していた戦闘機編隊の内のフラフラと飛んでいた一機の挙動がおかしい事に早川が気付いた
それはまるで墜落寸前の戦闘機のような挙動だった
次第に他の乗組員達もその様子に気付いたのか艦長の判断で、非常事態に備え甲板のエレベーターでエンジンを始動させていた戦闘機を発艦させて、合衆国軍機の編隊に
『最悪の場合は本艦に着艦を許可する。』
と発光信号を送った
その信号がわかったのかその編隊の隊長機らしき戦闘機がバンクで合図をするとフラフラしていた機が着艦しようと船団の後方から近づいてきた
しかしそれが最大のミスだった
機体は船団最後尾にいた松型駆逐艦二番艦の上でガクッと急激に角度を落としその松型駆逐艦後部甲板に激突した
「うそだろ!」
早川は落ちる瞬間を遠くから見てそう叫んだ
すぐさまその激突された駆逐艦の乗組員達が、衝撃で血を流して気絶したパイロットを炎上する機体から救助すると、熱による誘爆を防ぐ為すぐさま現場の判断で後部甲板にあった爆雷や対潜多連装迫撃砲(扶桑版ヘッジホッグ)を放棄したが、間に合わず一発のヘッジホッグが爆発してしまった
それにより乗組員二人が破片でけがをしてしまった
本来ならその不幸な事故は事故で終わる筈だったのだが、合衆国は常識ではありえない行動を取り、後の歴史に、扶桑と合衆国が決別した『松事件』と呼ばれる出来事になった




