魔窟(まくつ)の住民達その二
「ふむ...特に遺伝子的にはこちらの人間と同じようだな...」
「あのー」
「ふむ、では生殖機能に関しても同じだろう、精密検査待ちだが陛下とも恐らく子をなせるだろう。」
「おい聞けやゴラ。」
沢山の手に連れ去られた直哉は、やたら消毒液のにおいがする部屋に連れ込まれた挙句椅子に縛り付けられ十数人近い白衣の集団に体のあちこちから遺伝子サンプルを取られていた
直哉は話を聞かない白衣達にキレていたが、白衣の聞く耳を持たず論議を続けていた
「あー、やっぱりやられましたか。」
そんな直哉を見ながら幸は入って来てそうそう直哉に言った
「紹介しますね、こいつらが人間として何か大切なものを捨てた研究者達です。 ここにいるのは遺伝子学や動物学に詳しい者達ですね、こうなったらもうダメなので行きましょう。」
幸は直哉を椅子から解くと歩いて行った
そしてしばらく研究室と思われる廊下を進むと、今度はインクと機械油が混じったような匂いがするエリアに入った
「ここが今日尋ねる予定の者達がいるエリアです、我々は工業エリアと呼んでいます。」
興味深そうに歩く直哉を見ながら、幸は言った
そして『精密機械工作研究室 許可無く無断で入ったら殺す』
と物騒な言葉が書かれた板が立て掛けられている研究室に入った
そこには目をぎらつかせながら二人を待っていたと思われる五人の科学者たちが椅子に座っていた
幸は直哉に紹介しようとしたが、科学者たちが『そんなもんするだけ無駄だ』と目で圧力をかけたので黙った
「まあ、この人たちは俺の事知ってるみたいだからいいでしょ幸さん。」
直哉は幸を助けるようにそういうと科学者達に持って来ていた資料を渡した
科学者達はそれをひったくるように直哉から取ると凄い勢いで読み始めた
これまでほぼ無言だったので幸は科学者達がどう言うか分からず心配そうな表情で直哉を見た
直哉はそんな幸の心配に大胆不敵な笑みで返した
そしてしばらくした後、科学者達が
「...おもしれぇ、あんたは俺たちに太陽光発電の効率を高めろってわけか。」
「こっちはバッテリーの高性能化をしろってことだな。」
「そっちはそうなのね、こっちは完全に電気で動く艦船用と潜水艦用の水流ジェットエンジンに車両用の電気と燃料のハイブリッドエンジンの開発よ。」
「高性能電探にそれと連動する対空装備の開発か。」
「こっちは新型の高性能電子計算機の開発...」
と呟き、直哉に顔を向けた、直哉は科学者達の視線を受けながらこう言い放った
「そうだ、そしてこれらはいずれ起こるであろう戦争で死ぬ兵士たちの数を減らす事が出来るだろう...そして何より面白いと思わないかね?」
科学者達はその言葉ににんまりと悪魔の様な笑みを浮かべると
「ああ、おもしろそうだな! ただでさえ開発に苦労した太陽光発電を更に良くしてほしい? 任せておけ! 三年よこせ、それまでに哨戒艦クラスの艦で使う電力を賄える位のを開発してやる!」
「こっちも三年で基地の五日間位の電力を蓄えられるバッテリー作ってやるよ!」
「私たちも三年で全部のエンジン開発してやるわ!」
「ははは! こっちは二年くらいで実戦で使用できる電探と対空装備仕上げてやる!」
「電算機は五年よこせ、誰にも解読できないようにしてやるよ!」
と直哉に約束した
直哉もそれに笑顔で答えた
その光景を見ていた幸は神楽に
「あれは魔王とその幹部が虐殺企てているような光景だった」
と言っている
後に彼らは約束通りに作り上げ、その報酬として支給された膨大な研究費用に狂喜乱舞したという
設定年数を1920年から1935年に変えますね
ご了承ください




