【始まりの森中級区】
アイテム一覧の右上の所持金額の表示でツミルは先日【バザー】に預けていたアイテムが売れていることを確認した。アイテム一覧から入金札は消えている。【バザー】に預けているアイテムが売却されると自動で消える仕組みになっているのだ。
ツミルの所持金額は3250ペルだ。アイテムを店売りしていたら利益は600ペルだったことを考えると【バザー】も悪くないと彼は思う。
ツミルの初めてのペルの使い道はすでに決まっていた。HPポーションとMPポーションを買うことだ。これらのアイテムは店売りかマップにランダムに出現する宝箱に入っている。またモンスターのドロップ、クエストの報酬、または【調薬】スキルによって作れる。
店売りよりも【バザー】で購入した方が安い。原因は市場に出回りすぎているからである。
【バザー】にて出品アイテムを見るのは簡単だ。【バザー】の店に出品札の他に赤い入品札が置かれている。その入品札を手に取れば青い画面が展開され、出品アイテムの検索ができ安いものからリストとして出てくる。欲しいものにタッチをすれば購入画面が移る。そこからは早い者勝ち。
ツミルは【バザー】でHPポーションの検索をする。平均価格一個当たり25ペルだ。店で買うと100ペルすると考えればお買い得である。
99個で1500ペルで出品されているHPポーションの購入手続きをすると【他のお客様が購入されました】と表示された。リストに載っている品は検索時の物であり購入する際売却されている場合がある。
購入のコツは最安値よりもリストで二つしたの物を選ぶことだ。ツミルは99個のHPポーションを1650ペルとMPポーション50個1600ペルで購入する。
人混みのなか誰にも関わらず買い物ができるのはツミルにとっては最高に気分がいい。
ツミルが回復アイテムに所持金のほとんどを費やしたのは新しく狩り場を変えるためだ。
【bestfriendonline】には四種類のエリアがある。
ダメージが発生しない━━【住宅区】
モンスターからのみダメージが発生する━━【安全区】
モンスターと自分の攻撃によりダメージが発生する━━【中級区】
モンスターと自分と他者の攻撃によるダメージが発生する━━【危険区】
ツミルは狩り場を【始まりの森中級区】へと向かう。
***
【始まりの街━━フレンドラ】から【始まりの森安全区】に向かい、そこを抜けて【始まりの森中級区】へ着くまでに約四十分かかった。
AGIが27のツミルにとっては長距離だ。この世界のマップはとにかく広く、AGI必須パラメータと言われるほど移動の速さを求められる。
【加速】を使っていたが元が遅いせいで変化は薄い。連続使用による修練度の獲得によりスキルのlevelは8から12まで上がっていた。
中級区からはモンスターはプレイヤーに敵意を向けてくる。ある一定以上離れない限り攻撃対象から外れないのだ。
ツミルは周囲を確認する。他のプレイヤーはそこそこいる。彼らの全てが組を作りモンスターと戦闘を行っている。一つ気になるのは結界のような壁をはっていることくらいだ。
「まぁ、俺は一人ですから、気にする必要もないか」
ツミルは何かしらの構成か作戦なんだろうと勝手に判断すると森を探索する。
安全区の約二倍くらいの広さで川や滝、湖など設置されているエリアだ。モンスターのlevelは安全区より高い。
奇怪な鳴き声を鳴らすゴブリン達がが右手に剣や棍棒を持ち歩いている。数にして五体、大きさは80センチくらいである。
「やべっ、目があったよ」
ニヤリと一体のゴブリンと視線があう。鳴き声を上げると仲間を引き連れツミルに襲いかかった。
ツミルは剣を振るう緑のゴブリンに慌てて鞭を当て距離を保とうとする。与えたダメージは【21】だ。
棍棒持ち二体に剣持三体はツミルを囲うように陣形を取るり二体ずつ攻撃を仕掛けくる。鞭で打ち払った直後、別の二体が襲いかかる。
攻撃のモーションに移れず回避もできない状態を狙われ、剣二本がツミルの体を切った。赤いエフェクトが攻撃の軌跡だ。
体力ゲージは二割程度減少している。敵は五組で行動するゴブリン達で、個体それぞれの能力値は低い。それでもコンビネーションは抜群であり気を抜けば体力全損になるから侮れない。
(モンスターでさえ仲間がいるのかよっ)
仲間を引き連れ不気味に笑うゴブリン達をツミルは睨む。
「数の暴力は反対だぁ!」
ツミルは鞭を乱暴に振り回す。自分の体にも打ち付けダメージを負うがゴブリン達は馬鹿の一つ覚えのように攻撃を仕掛けてはダメージを受け鞭で飛ばされていく。
五体のゴブリンは消滅をする頃にはツミルの体力は半分になっていた。
「STR低くて助かった」
体に鞭が当たってもダメージは【1】か【MISS】であり、火力重視にしていたら今頃街の教会で復活していた頃だ。
ゴブリン達を倒して経験値が【200】手にはいる。次のlevelまで後900だ。
ツミルはアイテム一覧からHPポーションをとりだし体力を回復させる。使い方としては飲むという行為だ。
飲む動作は約二秒だ。すぐに口の中で溶け無くなる。
ツミルは周囲を観察する。鞭は使いずらく他のプレイヤーを参考にしたいからである。
鞭持ちと弓持ちの人はいない。使いずらいうえにパーティープレイにおいて見方に攻撃が当たる可能性が高いのが使われない理由の一つだ。
ため息をするとツミルの視界にモンスターが写った。それは金色の狼だ。大きさは運搬トラックほどあり息を荒くして足を引きずりながら何から逃げている。狼が来た方向から炎の槍が飛んできて狼を刺す。
「何あれ?」
連続で炎の槍を受け体に炎のエフェクトを纏う。痛みを訴えるように吠える狼はツミルを噛みつくように突っ込んできた。迎撃しようと鞭を振り回す。
鞭は狼の鼻に当たると【critical40】と表示され金色の狼は力尽きた。
予想外な事態に腰を落とすと視界に【月光狼ライトウルフ討伐により経験値25000獲得】とメッセージが流れていた。