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 パラパラと足音が聞こえる。

 余りに退屈すぎて聞こえてきた幻聴かなって思ったけど、そうでもないみたい。

 いつも変わらなかったはずの空間に1つ穴が開いていて、そこから足音が聞こえてくる。


 2人かな?

 まあこの迷宮にやってくる冒険者は決まって2人組なんだけどね。

 きっとどこかで、2人じゃないと通り抜けられないような試練があるんだろうな。


 ああ、ボクも冒険者側になりたかった気がする。

 いや、やっぱり安全な町で暮らす職人になりたかったかな。

 ケーキ屋さんとか千代紙屋さんとか、夢を作って夢を売る職人さん兼商人さんになりたかったね。


 喫茶店のマスターとか和カフェのマスターとかにもちょびっとだけ憧れる。

 苦いのは苦手なんだけどね、ボク。



 ……で、この2人は誰なのかな?


  種族:人族(魔法使い) 種族レベル:2

  名前:リーヴィ・ツォネルパ 年齢:17

  HP:95 MP:98 SP:80 状態:緊張

  スキル(一般):風魔法3 杖術2

  スキル(種族):なし

  称号:異世界人の妻


  種族:人族(未覚醒聖女) 種族レベル:2

  名前:南泰雅みなみたいが 年齢:20

  HP:97 MP:100 SP:98 状態:普通

  スキル(一般):光魔法2 杖術3

  スキル(種族):なし

  称号:異世界人


 うーん、女装男子とその妻かな?


 1人は大和撫子な感じの……男?

 1人は「ロシア出身です」って言われたら即信じてしまいそうな感じの美女。


 っていうか、傘って杖の一種なのかな?

 聖女様の方は赤い番傘、妻の方は黒い日傘を持ってんだけど。

 ちなみに服の方は、聖女様が白色と桜色、妻が檸檬(れもん)色と松葉色の着物ドレスだよ。


 ……色違いの、ペアルックだよ。

 双子ルックって言うんだっけ?


 彼らの目的は……やっぱり迷宮攻略なのかな?

 ラスボスと思しき人形は相も変わらず小山の中に埋まっているんだけど。

 それとも、異世界人的な相談とか交流とかが目的だったり?


 ……あの人形、しゃべれるのかな?



 んん?

 えっと、宝箱()からペリッと()がされるこの感覚……まさか、飛ばされる?


 え、嘘でしょ?

 なんでボク、この時期、この瞬間に移動させられちゃうの?

 これからこっちで、何かが起こりそうな雰囲気じゃなかった?


 だって、異世界人と異世界人と、ついでにその妻が遭遇したんだよ?

 いや、これからするところだったんだよ?


 これからこう、何かよくわかんないけど、何か凄いことが起こる予定だったんじゃないの?

 異世界人史に残るような、何かが。

 ボクも異世界人の称号を持つ1人なんだし、見せてくれても良かったんじゃないの?


 むー、何でダメだったんだ。

 納得できない。


 けど、(あらが)えないんだから仕方がないか。

 ボクの魂的な何かの移動が終わるのを、ボクはいつものようにただボーっと待つしかない。


 段々と、諦めのいい性格になっていくよ、ボク。

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