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今回の出現ポイントは行き止まりへと続く通路なのか、とにかく人通りのない通路だった。
討伐されたばかりなのかモンスターもいない。
討伐したのは目の前の2人組だろうか?
1人は白い着物を、1人は黄色いドレスを着た少女だった。
1人は赤い番傘を、1人は黒い日傘を持つ少女だった。
ボクは無言のままで開けられて、そしてボクの中の宝物は一瞥もされずに放置された。
……。
暇だ。
いつも以上に暇だ。
あと、色やデザイン的に黄色いドレスの方の少女には喜ばれるんじゃないかと途中から思い始めていたので……。
ちょっと心が痛い。
お、冒険者がきた。
小学生の息子とその父親って感じの2人連れだ。
服装はTシャツと短パン、武器はたぶん磨製石器の石斧……。
最近の冒険者の流行というか思考がちょっと分からなくなってきているボクがいる。
「これなあに?」
「宝箱っぽいな。中身はレターセットか」
「『ひまわりのようなあの子』ってだれだろうね?」
うん、誰だろうね?
「さあな。ただ、使うなら渡す相手には気をつけろよ」
「ん、気をつける?」
「ああ。ひまわりの花言葉で有名なのは『あなただけを見ています』だからな」
息子が可愛らしく首をひねる。
「えっと、ストーカー?」
「いや、プロポーズに普通に使われる花だろうが、ひまわりは」
「ぷろぽーず……」
へー、知らなかった。
恋人すら……いや、まだ若かったからね、ボク。
てか、ひまわりの花どころか花言葉まで知っているって……。
おじさん、間違いなく地球出身者だよね?
鑑定してみるかな。
種族:魔族(未覚醒魔王) 種族レベル:1
名前:東猶人(ひがしゆうと) 年齢:8
HP:100 MP:100 SP:97 状態:普通
スキル(一般):なし
スキル(種族):なし
称号:異世界人
種族:人族(未覚醒勇者) 種族レベル:1
名前:北利人(きたりひと) 年齢:38
HP:100 MP:100 SP:98 状態:普通
スキル(一般):なし
スキル(種族):なし
称号:異世界人
日本人っぽいね、2人とも。
……だからどうしたって話ではあるんだけど。
「リヒトさんってさ、コイビト5人だよね?」
「うん? 今は婚約者が2人で恋人が3人だが……」
うわ、頑張るなあ、おじさん。
「あ。お前まさか、便箋がちょうど5枚あるからそれを1枚ずつあげろとかそういう話……」
「うん、そういうお話」
「いやいや、俺は5人の女たちを平等に愛さなければいけない男だからな。『あなだだけを見ています』なんて言葉でも態度でも示したら、逆に不誠実だと叱られてしまうよ」
「んー、よく分かんないや」
うん、ボクも分かんないや。
「あー、男ならできないと分かっている約束を自分の女にすることはできないって話だよ。……まだ8歳の猶人にはちょっと早い話かもしれないけどな」
「ふうん?」
ふうん?
「よし、もめごとの種にしかならないレターセットは放置の方向で……先に進もうか、猶人」
「うん!」
……うん?




