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「わ。かわいらしいペーパーナイフ……ペーパーナイフだよね? これ」
いつものようにボーっとしていると、不意にそんな声が聞こえてきた。
あ、ついにボクも開けられたのか。
冒険者はいつものように初心者2人組だ。
今回は男女2人組だったので、
「リア充爆発しろ」
と言うべきなのかもしれないけど、使ったことがないのでタイミングが分からない。
心寂しくなってきたのでちらりと横を見てみたけど、真隣の宝箱さんは消え去ったあとだったみたい。
お別れのあいさつができなかったのがちょっと残念かな。
「桃色の箱からはクッキーしか出ないって聞いてたけど……クッキーには見えないね」
うん、クッキーじゃないからね。
てか、ランダム作成でできたのはペーパーナイフだったんだね。
ちょっと意外。
以前ためしにランダム作成を使ったときには、短剣とか手袋とか、無難な武器や防具しか出なかったからね。
……あ、もちろん、フリルとかレースとかリボンはもれなく標準装備されていたよ。
「持って帰るよね?」
うん、持って帰ってください。
こわごわとペーパーナイフに腕を伸ばす女の子。
まだかなー?
折角だしペーパーナイフの鑑定でもするかな、暇だし。
名前:かわいらしいペーパーナイフ 種類:ケーキナイフ 重さ:2
備考:装備すると物理攻撃力が+1。ケーキがきれいに切れる。
あれ?
物理攻撃力が+1なのはガッカリだけどそれよりも、
「ケーキナイフなのに名前が『かわいらしいペーパーナイフ』って……君、それでいいの?」
って感じだよ。
いいと思ったから受け入れたんだろうけど……創造主としては微妙な気持ちだよ。
闇の空間で、ボクは見えない両手を使って、見えない何かをねりねりと練り上げていく。
てか、これって何なんだろうね?
ボクのMPは0だから、魔法ではないと思うんだけど。
見えない何かをクッキーよりも薄く薄く広げてから、折りたたんでいく。
折りたたまずにただ形をそろえて切っただけのものもいくつか。
「こんな感じでいいのかな?」
作ったのはシンプルなレターセットもどき。
「さて、今回はどう装飾されるのかな?」
レターセットもどきをボクの中にそっと入れると、淡く発光した後に、黄色い紙でできたレターセットに変化した。
そこで止まってくれればいいんだけど、今回も止まることは無かった。
筆がないのにみるみるうちにひまわりの絵が描かれ、エンボッサーがないのに小さなハートがいくつも浮き上がり、糊も両面テープもないのにレースやリボンがくっつき……うん、完成したみたい。
名前:ひまわり柄のレターセット 種類:レターセット 重さ:1
備考:ひまわりのようなあの子に想いを伝えることができる。一途な人用。




