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もしかしたら、
「迷宮の中にある宝箱だから、冒険者に役に立つものを出そう」
という考え方が良くないのかもしれない。
フリルやレースやリボンが勝手にくっついてくるのなら、ぬいぐるみとか髪留めとかガラスの小瓶とか、くっついても問題がないアイテムを作ればいい気がする。
あと問題がなさそうなのは……ボクが考えた魔法が封印された使い捨ての巻物とか?
いろいろ考えながら現実逃避を頑張っていると、やっと戦闘が終わったみたいだ。
武器を収めながらこちらに近づいてくる2人組の向こうに、何やら形容しがたい物体が見えた気がするけど……うん、気のせいだ。
斧で叩き斬られたくらいで、ボスの体があんな風になるはずがない。
「えっと……なんで宝箱が2つあるのかな?」
あ、ボクの存在が気になりますか?
開けてもいいんですよ?
仮初とはいえ痛くないとはいえ死ぬのは嫌だけれども、無視されるのも暇なのも嫌なんです、ボク。
至近距離での血肉が舞う戦闘とかもう見たくないので、できれば移動したいんです、ボク。
「赤い方がボス部屋のだよね?」
「うん。もう一個はクッキーしか出さないって箱じゃないかな」
「ああ、道具屋さんに売られていた鍵はここで使うのか。……買った?」
へー、ボクの鍵は道具屋さんでも売られ始めたのか。
……なのに、スルーされ続けているのか。
なんだかボク、罰ゲームに使えそうな毒物一歩手前のクッキーを作りたくなってきたよ。
「買ってない」
「だよね。今は食料品の値段は絶賛値下がり中だし……宝箱を無視とか何か勿体ない気もするけど、見なかったことにして赤い方を開けようか」
「うん、楽しみだね」
真隣の宝箱さんはごくごく普通の長剣を出して消えた。
鑑定してみると、
名前:古びた長剣+1 種類:両手剣 重さ:5
備考:装備すると攻撃力が+11。装備するにはSTRが8必要。
ふむ、ボクが作る武器とは見た目も性能も段違いだね。
やっぱり、ボクは武器とか防具とかそっち方面には手を出さない方が良さそうだ。
真隣の宝箱さんが生まれ変わること……うーん、7回くらい?
ボスが討伐される度に、毎回きっちりと開けられるんだよね。
次の階へと続く魔法陣が真隣の宝箱さんの真下にあるもんだから、たとえ上級者であったとしてももれなく開けていく。
ボクは反対に、
「あー、紛らわしいところに湧いてきたね、このクッキー箱」
とか苦笑されたり無視されたりしながら、放置され続けているよ。
「今回は一味違うよ? なんたってランダム作成だからね。クッキーじゃない可能性が高いんだよ?」
ってそのたびに言ってはいるんだけどね、聞こえないみたい。
しかし、ランダム作成で結局何ができたんだろう?
体の中は鑑定ができないから、未だに謎のままなんだよね。
そろそろ誰か開けてくれないかなあ。




