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基本、ボクはただ迷宮の中でボーっと過ごしている。
動けないからね、宝箱は。
うん、暇だ。
ここは初心者用のダンジョンらしくって、しかもボクの担当は上層だけっぽくって、モンスターはあんまりいない。
冒険者もあんまりいない上に、最近はほとんど素通り。
話し相手もいなくって、ひ……ま…………。
ハッ?!
ヨダレ出てないよね?
気が付いたら、周りが真っ暗だよ。
これって、死んじゃったってことだよね?
てか、人間の三大欲求から解放されて寝ることなんて無いはずのボクなんだけど……もしかして今、ボク、寝てた?
いや、まさかそんな……ね?
ま、いいや。
とりま今は宝物作成の時間──ボクが唯一、ボクの意思で何かができる時間だよ。
さて、何作ろうかな。
最近は外の世界は豊作らしくってさ、クッキーは超がつくほど不人気なんだよね。
ここは1つ、度肝を抜くような何かを……。
あ゛。
考えすぎてタイムアウトってか、ランダム作成になっちゃったよ。
宝物は何になっちゃったんだろう?
てか、それよりも。
まさかとは思うんだけども、ここ……ボス部屋の宝箱さんの真隣だったり?
何か地面が大理石っぽかったり、王様が座るような椅子があったり、真隣にそれっぽい宝箱さんがいらっしゃったりするんですけど。
ボク以外の宝箱なんて、この世界にきて初めて見たよ。
き、緊張する。
「は、はじめまして」
挨拶してみたけど、無視された。
「あの、ここってもしかして、ボス部屋だったりするんでしょうか?」
質問してみたけど、無視された。
まあ全身が赤色と金色で、
「割といいもの入ってます!」
って自己主張しているかのような外観の宝箱さんだしな。
無視されても仕方ないか。
しかし、暇だ。
ボスと思われるでっかいゴブリンっぽい何かも、基本ボーっと椅子に座っているだけだし。
たまに配下に力こぶを見せたり、牙を見せるためかニヒニヒ嗤ったりしているけど、面白くもなんともない。
真隣の宝箱さんを鑑定してみたんだけど、
種族:宝箱(赤色) 種族レベル:1
HP:100 MP:0 SP:0 状態:普通
スキル(一般):物理攻撃無効、魔法攻撃無効、状態異常無効
スキル(種族):宝物作成(赤色)1
称号:なし
特に目ぼしい情報はなかったり。
お、冒険者がきた。
ボス部屋の扉が開いて、両手斧とモーニングスターを持った女の子2人組が現れたよ。
ボス部屋に来るのは初めてなのか、それともボスたちに嫌悪感を感じているのか、ちょっと顔がこわばっている感じだけど……見た目、君たちの武器のほうが凶悪だからね?
2人は互いに顔を見合わせ、肯きあう。
ボスは立ち上がって咆哮。
配下たちもそれぞれ武器を構え、あるいは詠唱を始める。
ふむ、とばっちりが来そうで怖いね。
けど、宝箱は逃げられない。
仕方がないので、心だけは逃げる方向で、現実逃避をはじめようかな。




