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「一緒に行こう?」

 なんて可愛らしい幼女に可愛らしくおねだりしたら、ついうっかり肯いちゃう人もいるんじゃないかなと思う。

 たとえロリコンでなくとも。


 ああ、ボクもボクが宝箱じゃなかったら行ったかもしれない。

 だがしかし、ボクは宝箱だ。

 行けるわけがないだろと。


 いや、目的地に行くことだけならできるかもしれない。

 そこにはボクのもう1つの体があるのだから。

 でもそれでは、一緒に行くってことにはならないだろう。


 ボクには足もなければ腕もなければ触覚もない。

 魔法もない。

 移動手段が何もないのだ。


 それともこの幼女、ボクに3つ目の身体を用意してくれるつもりなんだろうか?

 なんかすごい魔法使いみたいだし、作れるよね?


「なら仕方がないの。行ってくる」


 うわ、しょんぼりとした姿を見せながら、あっさりと置いていったよ。

 いや、いいんだけど。



「着いたー!」


 いつものようにぼーっとしてたら、なんかどっか遠くからそんな声が聞こえた。

 気が付いたらボクは金色の宝箱へと移動していた。


「よし、開けるよ!」


 幼女はなぜだか知らないけれども、ハイテンションだ。


 止めるつもりなのかなんなのか、小山がもぞもぞしているけど、遅い。

 どう考えても間に合わない。

 もっとも、止める気があればの話だが。


「ぴきーん!」


 何だかよく分からない擬音が幼女から飛び出し、宝箱はあっさりと開けられた。

 宝箱に入っていたのは、思い出した通りに『謎の物体X』が3つ。

 そして視界の端っこに、2つの質問と選択肢が浮かんだ。


 3つ目は……ないな。

 何か条件でもつけたっけ?

 勘違い?


「よっしゃ! 可愛いリリちゃんにもーどれっ!」


 いや、戻っても今と同じ姿なんじゃないの?

 本体が骨じゃなくなるだけで。

 あと、名前……リリっていうんだね、今初めて知ったよ。



 他の異世界人たちのところにも、この表示は出ているんだろうな。


 ……唐突な流れで吃驚しているんだろうな。

 ボクも吃驚してるし。

 なかなか気づけない人もいるかもしれない。


 結婚しちゃってる人がいた気がするけど、どうするんだろう?

 残るのかな?

 戻るのかな?


 どっちにしろ、手放さなきゃいけない人は出るんだよね。

 切ないなあ。


 ま、ボクには関係のない話か。

 制限時間は特にないんだし、じっくり決めればいいと思うよ、うん。



 さて、それじゃあボクも戻るかな、元の姿に。

 ……いや折角だし、もっと若いころに戻るのもいいのかな。


 ひまわりのようなあの子って一文が、妙に心に残っているんだよね。


 ボクが通っていた小学校にはひまわり畑があってさ……。

 だけど、そのひまわり畑に関する思い出が1つもないんだよ。

 過去を書き変えたくなるよね、うんうん。


 いやでも、もうちょっとだけこの世界を見てから戻るかな。

 制限時間は特にないんだし。

 それに幼女が1人でちゃんとやれるのかちょっと心配だったりもする。


 だってさ、誰も相手しない真っ暗な空間の中で、それでもいつまでも待っちゃう人なんだよ?

 骨の姿で。

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