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 仮初の死を迎えたボクの傍には、実はいつも骨がある。

 白い骨だ。

 骸骨と言ってもいいし、骨格標本と言ってもいいし、スケルトンと言ってもいいと思う──何せ正体が不明だし。


 実はボクはホラーが苦手だ。

 真っ暗な空間に白い骸骨がぼんやりと浮かんでいたって、見なかったことにするくらいには苦手だ。

 ずっと幻覚だ、幻覚だと思っていたけど……いつまで経っても消えやしない。


 さすがに幻覚じゃない気がしてきた今日この頃。


 このままずっと無視でもいいかなと思ったんだけど……ずっと無視されるって辛いよね、うんうん。

 ってことで、勇気を出して話しかけてみようと思う。


「えっと、君は誰かな? どうしてここにいるのかな?」


 震えるボク声に呼応するかのように骨がふるふると震えて、白い童の姿をとった。

 まるで座敷童のような女の子だ。


 ……何でもっと前からその姿じゃなかったの?


「ようやく気づいたのか、そなた」


 ええ、実はかなり前に、と心の中だけで呟いておく。


「妾からそなたたちに言うべきことが……あったのだが……待っている時間が長すぎて、もうどうでもいい気分になりつつある」

「あ、そうなんですか? じゃあボク、クッキー作りますね」


「いや、待て! 私、君たちを召喚した人ね。OK?」

「え、そうなんですか?」


 え、こんな子供が?

 しかもさっきまで骨だったよ、この人。


「そうなんです。君たちにやってもらおうと思っていたことがあったんだけど、あの金ぴかな人形がそのための魔法陣をぐっちゃぐちゃにしてくれちゃったせいで無理になっちゃったわけ。OK?」


 え、なんでぐちゃぐちゃにしたんだろう?

 八つ当たり?

 ……ありそうだ。


「えっと、それで?」

「終わり。誰かに文句が言いたくなったから、言ってみた」


 うわー、単なる愚痴ですか。


「えっと、ボクは元の世界に戻れるんですか?」

「君の金ぴかの宝箱が開いたら戻れるようにしてあげたじゃん。あれ本当は失敗する予定だったんだからね?」


 うーん、それが本当なら有り難いけど……。


「でもレベル10の宝箱なんて、開けられる人いないですよね?」

「あー、私の依頼が成功すれば、少なくとも勇者と魔王が開けられるようになるはずだったけど……もう無理かも」


 うわ、なんてこった。


「他に方法はないんですか?」

「君たちを頼れなくなった分、他に力を回さないといけなくなったからね。これ以上、何かしてあげるのは無理だよ。ほっとくとこの世界、壊れちゃうし」

「え、壊れちゃうんですか?」

「そうじゃなきゃ、わざわざ他の世界から人間を引っ張ってこないって」


 うーん、そうなの?


「魔法陣が無事だった場合、ボクたちは何をする予定だったんですか?」

「未覚醒の勇者と魔王と聖女には今の勇者と魔王と聖女をそれぞれぶっ倒してもらうつもりで、君はその補助をしてもらうつもりだったけど……私の話を聞かずにいきなり帰還の魔法とか作り始めたよね?」


 うわ、幼女に睨まれた!


「えっと、魔王はともかく、勇者と聖女も倒すんですか?」


 その2人って、正義の味方じゃないの?


「うん。そうしないと種族間戦争が終わらないからね」


 へー、戦争やってたのか、気づかなかったな。


「いきなり強い存在を世界に放つと世界が壊れる心配があったから、魔法陣でじわじわ強くするつもりだったんだけど……」


 うーん、まだ続くのかな?

 残り時間が心配になってきたし、ボクはクッキーを作ろうかな。

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