問題
方向性を決めるのに2年ほどかけてしまいました。
随分と濃い内容の夢を見ていた気がする。
徐々に意識が覚醒していき、慌てて飛び起きた。
「…ああ、そうか。」
ここは別邸。
俺は現当主。
汗をかくほどの夢を見た理由は昨日聞かされた話のせいだろう。
食事のあとキャシーと多少会話をし、ベッドに入ったのは10時頃であった。
時計を見ると7時少し前を指している。
学校へ行く際に起きる時間だ。
時計の長針が12を指すと同時にノックがした。
「入れ。」
「おはようございます。お目覚めでしたか。」
「7時に起きる習慣だったからな。」
「以降もこの時間でよろしいですか?」
「慣れるまでは。」
「かしこまりました。」
服を着替えながらカロンに問いかける。
「今日は内部へ入るのか。」
「それがよろしいかと。アメリアには10時に来るように伝えてあります。」
「そうか。朝食は。」
「8時になりますがそれより早い時間を希望されるなら…」
「いや、8時でいい。」
「わかりました。」
「それまでの間」
カロンに向き直る。
「もっと詳しくこの場所について教えろ。構造、存在する生物、分布、管理上の問題、できる限り詳しく。」
「1時間で収まるよう善処します。」
脳がゆだるような話であった。
ここにいるのは西洋から来たものが主になっている。
それらを妖術やら呪術やらの日本的な技でこの森の中に一時封印しているという状態であり年に数回回収班がやってくるらしい。
しかし、回収が難しいものやこの森で暮らすことを決めた種族もいる。
キャシーのようなエルフはもちろん、ドワーフ、人魚、グリフォン、ユニコーンなどがそうだ。
今挙げたものたちはのは人に害をなさないものであり、この屋敷周辺に居住している。(人のように暮らしているものが多いらしいので居住のほうが良いだろう)
対して回収が難しい人に害をなすものは比較的遠くに生息しており、厳重な結界を何重にも張られている。
いわゆる危険区域だ。
「そして管理上の問題ですが」
「ああ。」
「南西の方向にぽっかり穴が開いていまして。」
「穴?」
「ええ。文字通りの穴であり、結界上の穴でもあります。これがこの森最大の問題と言えるでしょう。」
「南西というと危険区域の側ということにならないか。」
「はい。危険区域にはドラゴンなど直接的な害をもたらすものだけでなく、夢魔などもおりますからその類の魔術が原因かと。推測の域を出ませんが。」
「その穴から魔物などが出ていくことは?」
「ごく稀に。ですが出て行ってしまったものには触れません。」
「は?」
「戦闘要員といえるものは多くありませんので。出て行ったものを討伐する特殊な方々に任せています、穴の近くには最も強力な方を配置しておりますからご安心ください。」
「つまりこちらの仕事は原因究明だと。」
「理解が早くて助かります。」
危険なものたちが管理下に置かれているのなら護衛など必要ないだろうと思っていたのだが。
そういうことか。
ため息がこぼれる。
「しばらくはここに慣れていただくことを優先しますのでご安心を。」
「いや…ああ。そうだな。最後にもう一つ。」
「何でしょう。」
「図書館にある幻獣や妖精に関する書籍の場所が聞きたい。ドイツ語やフランス語も読めないわけではないが日本語か英語が好ましい。」
「では後程ご案内させていただきます。」