カロン
まだ、本題に入りません。
前置きが長い。
街の中は意外にも現代的であった。
車こそ見当たらないものの、街の入口から奥の森へ進む道は舗装されており、道端には店が並んでいた。
まるでヨーロッパの通りのようだ。
しかし人気は全くない。疑問に思ったがとりあえず通りを進んでいった。
すると通りの奥、森の入口に人影が見えた。
近付くと燕尾服を着た美青年が笑顔で立っていた。
母の言っていた執事であろう。
「諒介様ですね。お待ちしておりました。」
「……」
確かに、若い。
若いとは思うがいまいち年齢が分かりにくい顔立ちである。
20代前半にも見えるが30代後半と言われても疑問には思わないだろう。
青年は俺の手荷物を受け取り、別邸までの案内を始めた。
「この森はあまり手が加えられていないので足元に気を付けてください。」
「通りは整備されているのに?」
「あそこは外から見えるので普通の街のような見た目にしているんです。」
「住人の家はどうなってるんだ?」
「そうですね…この場所についての説明が終わってからにしましょう。その方が納得しやすいでしょうから。」
(街、ではないのか)
本当に当主以外はこの街についてのことは何も知らないらしい。
別宅は森の中心部にあった。
森はかなり広いらしく、着く頃には日は沈み始めていた。
「…移動手段は徒歩しかないのか?」
流石に舗装されていない場所を歩くのは疲れた。
「ないことはありませんが色々とありまして…」
「さっきからはぐらかされてばかりの気がするんだが。」
別宅はこれといって変なところはなかった。
とはいえ、着いてすぐに足を休めたいという理由で広間の椅子に陣取ったので部屋の中を見たわけではないが。
「では、そろそろ説明いたしましょうか。」
「まず、お前の名前は?」
「カロンと呼ばれています。」
「呼ばれている?」
「…では、まず私のことから説明しましょう。」
「……。」
「単刀直入に言えば、死神といったところでしょうか。」
「は?」
「ほら、よく小説とかにでてくるでしょう。鎌を持ってフードをかぶった骸骨。」
言いながらカロンはどこからともなく大きな鎌を取り出した。
「それが死神の鎌だって?」
「正確には違います。死神は天界でただ生物の寿命を決めているだけの存在です。」
「嫌ってるみたいだな。」
「ええ。あの方の性格ときたら…。まあ、そんなことはどうでもいいでしょう。私たちの仕事はその寿命になった生物の魂を神のもとへ運ぶことです。導魂者と呼ばれています。」
「それなのに執事を?」
「…初代当主と約束をしましてね。」
一瞬、カロンの目が遠くを見つめた気がした。
「では、次にこの場所についての説明をいたしましょう。」
カロンは身長185cmの黒髪美青年です。
諒介さんは身長173cmの黒髪美少年です。
眠いので続きは明日。