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桂かすが短篇集

スペース・マヨネーズ大戦

作者: 桂かすが

 その日、日本はマヨネーズにより壊滅し、全面降伏をした。

 

 ブームの始まりは新製品の健康になるという触れ込みのマヨネーズだった。

 特殊なオイルを使った、いくら食べても太らないマヨネーズ。それどころか健康にも大変いい。

 革命とも言えるマヨネーズはTVで取り上げられあっという間にブームになった。

 野菜にはもちろん、肉に、ご飯に、パンに、麺類に。ありとあらゆる料理にマヨネーズが用いられるようになった。

 

 警鐘を鳴らす声もあったが小さい物だった。実際に新しいマヨネーズは健康によいとうデータが時と共に積み上がっていくのだ。

 アレルギー体質の人向けのマヨネーズも開発された。離乳食や病院での流動食に積極的に採用された。もはやマヨネーズがない食卓はないと言ってもいい状況。

 さらに人工卵黄も開発されて生産量が飛躍的に増大した。

 マヨネーズを開発した会社の株価はうなぎのぼりで、マヨネーズの輸出は車の輸出を抜いて、日本最大の輸出産業となりつつあった。

 

 一部のマヨネーズ嫌いの声は封殺された。

 もはや、日本はマヨネーズなしでは成り立たない経済となっていたし、マヨネーズで育った世代はそれを当然のものとして暮らしてきた。

 マヨネーズの、マヨネーズによる、マヨネーズのための経済。マヨネーズを作り、マヨネーズを消費し、その利益を享受する日本国民。そしてその波は世界中に波及していった。

 ごく自然に、すべての料理にかけられるようになったマヨネーズを拒否するような人間は非国民として断罪され、地下深くに潜行していった――


 第二の革命はマヨネーズをエネルギー源とする、マヨネーズ機関の発明だった。

 もともとはマヨネーズに用いられていた特殊なオイルの研究から派生したシステムだったのだが、面白いことにオイル単体ではなくて、マヨネーズを使うほうがエネルギー効率が上だったのだ。

 即座に莫大な国家予算が投じられ、マヨネーズ機関は短期間で長足の進歩を遂げた。

 もやは原発事故に怯えることも、石油を輸入することも必要のない社会。マヨネーズ機関は排ガスもほとんど出さず、難点といえばマヨネーズの匂いのする排気があることくらいだったが、マヨネーズ嫌いを公言するような人間はもはや日本には存在しなかった。

 低価格、高効率のマヨネーズ機関が電力を作り、車や船、工場を動かした。

 マヨネーズの需要は更に上昇し、もはや日本のありとあらゆる産業が何らかの形でマヨネーズ作りに参画していた。


 これに世界は異を唱えた。マヨネーズもマヨネーズ機関も共に、日本が製法を独占していたのだ。

 相次ぐ国連決議、アメリカやEU、中国ロシアからの圧力。

 いまや全ての産業がマヨネーズに依存している日本が、それを手放してしまえば社会が崩壊してしまう。当然拒否をした。輸出は十分にしているはずだ。それで我慢して欲しいと。

 だが、国際世論は圧力を強め、ついに国連軍が日本に差し向けられた。唯一米軍が傍観をしてくれていたのが救いだった。

 第一次マヨネーズ紛争と呼ばれるこの事件は、自衛隊と国連軍がぶつかる寸前、アメリカの仲介により、マヨネーズ機関の秘密を全世界に公開することを条件に終結した。


 製法は公開したとはいえ、マヨネーズ機関の研究は日本が最先端。またマヨネーズ機関の権利も完全に手放したわけではなく、低額ではあるが特許料も入ってくる。低額とはいえ、すべての産業に使用するとなれば莫大な利益を生む。それはマヨネーズ機関を独占していた頃と遜色がないほどになった。

 それに肝心のマヨネーズの製法はまだ日本が握っていたのだ。

 

 自衛隊は国防軍と名を変え、豊富な資金により軍備が強化された。二度と日本の国土を侵され、マヨネーズを奪われるようなことがあってはならない。

 新式の強力なマヨネーズ機関に、マヨネーズをエネルギー源とするマヨレーザー砲が新たに開発された。

 マヨネーズ機関を利用したロケットで打ち上げられ、衛星軌道上に配備された衛星マヨレーザー防衛システム。

 高効率のマヨネーズ機関により長時間長距離航行可能な、無人戦闘機群。海上を防衛するマヨイージス艦と、海岸に配備された無数のマヨレーザー砲。


 第二次マヨネーズ紛争が起こるのは時間の問題だった。

 全てのマヨネーズの製法を公開し、特許を手放すべし! 飲める要求ではなかった。

 

 今度は米軍も含め、全ての国が日本の敵にまわった。だが国防軍のシミュレーションによると日本の勝利は揺るがなかった。時代遅れの装備に、数だけは多いが寄せ集めの連合軍は、指揮系統もバラバラな烏合の衆。核兵器でさえ、衛星マヨレーザーによって無力化される。


 戦端が開かれたが、予想通り国防軍が優勢に戦局が推移する。

 国連軍は日本の本土に到達することなく撃退され、それなりの被害は出たがほとんどは無人機で人的被害は数えるほどだった。

 だがそこにクーデターが勃発した。地下深く潜行していた、反マヨラー勢が一斉に蜂起したのだ。

 突然の内部からの反乱に混乱する国防軍。それにタイミングを合わせるようにして侵攻する国連軍。

 水際での激しい戦闘。反マヨ軍により奪われたマヨネーズ兵器により、四国が、九州が、陥落し、ついには本土までも爆撃により壊滅し、日本は全面降伏をした……


 数十年後。日本はすっかり復興し平和となり、反マヨ派は一時は完全に政権を握ったものの、結局のところ時代の流れには逆らえず、相変わらず日本はマヨネーズ本位の経済にまみれている。

 それどころか、マヨネーズは世界中に広がり、さらに月に、火星に、マヨネーズによる新たな人類の植民地が作られ、日本が全面降伏した年はマヨネーズ宇宙元年と呼ばれ、さらにその数百年後、人類はマヨネーズとともに、銀河へと広がり大きく繁栄していった。

お題:マヨネーズ で作りました

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― 新着の感想 ―
[一言] 「ええい、ままよ!」 意味:マヨネーズにゆだねればすべては何とかなる
[良い点] ニトロワしかみてなかったですが、こういう馬鹿っぽいのもいいです。ニトロワの料理描写が垣間見える気がします。 [一言] ニトロワの続きはまだでしょうか?剣の聖地が楽しみです。私は居合道をやる…
[一言] 銀魂の土方が狂喜乱舞するな
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