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情炎の魔術師  作者:
Primerita
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8.日常

 つまり兄は、神殿を変革せよと言っているわけだ。


 それは楽しい考えだった。



「お前は俺とよく似ているよ」


 そんなことを言われたことがある。


「お前の本質は俺と同じだ。焦がれて焦がれて追い求めるために燃え盛る」


 そう口にしながら、兄は遠くだけでなく目の前を見据えていた。いや、遠くにある何かを追い求めるために、確実に手を打つ。焦がれていると言うくせに、焦りはまるでない。


「‥‥私に焦がれるものなど」


「見出していないだけだ」


 何もかも分かっているかのように兄は言う。だから俺は、そうなのだろうかと素直に思ったのだ。


 あれはいつだったろう。俺のことを断言した兄を、いつになく近くに感じたのは。



 俺の本質がどうだろうと、兄が求めるものが何であろうと、表面上日々は淡々と過ぎる。俺は無気力ではないにせよ特に熱意もなく修業に専念し、20を数えるころには神殿に伝わる術の全てを修めていた。神殿での術の行使に熱意はむしろ要らないのだろう。熱意をもって術を行使するのは神官よりもむしろ魔術師だ。俺の本質はそれに近いが、流石に神殿の膝元で匂わせるような馬鹿はしない。


 ただ、時々、小道具や呪文のひと言になど、改良を加えることくらいはした。これから先魔の力は弱まっていくのは確かだから、効率化を図るのは未来のためだ、とか何とか言いながら。神殿の上層部がそれを信じたのかどうかは分からないが、排除はされなかった。すでに俺が次期神官長になるのはほぼ確定していたし、余程のことには当たらない程度だったのだろう。


 兄とも一時期より話すようになった。俺に確たる地位ができたからだろう。兄にも俺にも遠慮はなくなった。立場の違いははっきりしすぎるほどはっきりさせていたけれど、それは必要なことだった。少なくとも俺にとっては。俺ははっきりと兄に仕えていたし、兄もそれを認めていた。兄弟仲良くだとか、そんな丸いことはお互い考えたこともなかった。俺たちの立ち位置はこれが一番自然だった。



 だが、淡々と冷静に生きていた俺を揺さぶる存在がやって来たのは、兄が若くして父から王位を受け継いだ、すぐ後のことだった。

実はここまで前置きだったり。

一週間以上前置き。申し訳ありません。

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