12.其後②
「兄殿下‥‥もとい陛下も、相変わらず阿呆でいらっしゃるようですね」
彼女が呆れたように言う。それでは寵姫もいらっしゃるようだと気付く、相変わらず俺の目には映っても認識されないままであるが。今更それに言及する気はない。俺にとっては、寵姫は兄が求めて得たものだというだけで、それ以上の意味などない。寵姫がそのつもりにならなければ無効にならない魔法だというから、おそらく寵姫の側でも俺と交流するつもりはないのだろう。
「それで、そのためだけに呼び出したわけでもないのでしょう?」
何かありましたか、と俺は兄を見る。
「あぁ。
二人目の子ができた」
「‥‥それは。おめでとうございます」
反射的に祝いを述べ、それからその重要性を考えた。
「‥‥また荒れますか」
「まぁ、そうだろうな」
その返事に、俺と彼女との嘆息が重なった。
「‥‥めでたいということに変わりはありませんが」
「‥‥王子殿下が生まれてからまだ一年も経っておりませんのに」
彼女の言葉には兄を責める響きが感じられた。それはそうだろう。
「そうですよね。それはつまり、義姉上がお隠れになってからまだ1年も経っていないということでしょう」
「それもありますけど、わが姫のお身体のことも考えていただきたい」
彼女は切って捨てたが、隣国の王妹が亡くなってそれほどすぐに寵を傾ける相手ができたというのは、隣国との関係から言うと決して良い事ではないのだが。当の本人であるせいか、彼女はそのあたりのところがぞんざいだ。
「喪った痛手からのめり込んだとでもしておくさ」
その線で行くことに俺としては反対はしないが、文句はつけておきたい。心底から。
「それに身体のことは考えたからこそ、今なのだがな」
そう思ったが、兄の言葉に一瞬絶句した。次に漏れるのは苦笑しかない。彼女は絶句したまま二の句が継げないらしかった。
「‥‥うーわー‥‥臆面もないとはこのことですか‥‥」
「‥‥それだけ寵が深いということで、‥‥結構なことですが」
それはそれ。とりあえず、少なくともある程度は操作ができるはずなので、考慮してもらいたかったというのが本心だ。だが正直どうでもいいと投げたくなった。
「‥‥く。わが姫が嘆かれない以上どつくこともできませんね‥‥」
とりあえず俺にできることは、彼女の漏れた本心を聞かなかったことにするくらいだ。




